第38話魔界大罪魔将アモン戦〜前編〜




「まずは小手調べだ。〔眷属召喚〕ラージデーモン、アークデーモン、リトルデーモン。」


アモンはどこからか様々なサイズの悪魔を呼び出す。


手のひらサイズもいれば人間サイズ、さらには自動車サイズまで。


その数なんと150体。


「貴様らは数の暴力に耐えられるか?」


その言葉を合図に悪魔達が一斉に襲いかかってきた。


一番最初にこちらに向かってきた普通サイズの悪魔に向けてナギも駆け出す。


悪魔は手にもつ三叉槍をナギに向けて突き出すが、ナギは顔を少し横にずらして回避すると悪魔の頭部を穿血刃で斬り飛ばす。


「カエデは小型、メイは中型をお願い!シルは後方から魔法で支援!」


「「「了解!!!」」」



メイとカエデは悪魔の群れへ突っ込んでいき、片っ端から悪魔を屠り始める。


メイは斥候特有の素早い身のこなしで悪魔達を翻弄し、短剣で喉元を掻き切っていく。


カエデは両手で棍棒を振り回し、小さな悪魔を一体ずつ確実に叩き潰していく。


「思ってたより強くないな...」


メイが悪魔の身体から短剣を抜きながら呟くと、カエデも棍棒を肩に担ぎながら


「まだ赤熊の方が手応えがありましtーー」


カエデの姿がメイの正面から消え、メイに大剣が振り下ろされる。


ーーーガキン!!


メイが両手の短剣で大剣を受け止める。


メイの身長の2倍もの大きさの悪魔がメイに向かって唸りながら大剣を再度振り下ろす。


「んぐぐぐ...カエデは大丈夫か.....?」


突然視界から消えたカエデを目線で探すと、カエデは別の大きい悪魔の頭部を棍棒で殴り飛ばすところだった。


地面に線を残して悪魔は後ろに後ずさるが、倒れるまではいかなかった。



メイは一安心すると目の前の悪魔に集中する。


「〔アクロバット〕!」


このスキルによって地上の機動力を向上させ、悪魔に躍りかかる。


悪魔の振り回す大剣によって四方八方に斬撃が飛ぶが、メイの後ろからいくつもの魔法攻撃が飛ばされ、その斬撃を相殺する。


「斬撃は私に任せて!!魔法で打ち消すから!」


「ありがとう!!」


シルの援護に感謝しつつメイは悪魔に特攻を始めた。


飛ばされる斬撃をかわしつつ迫り、目の前まで来ると高く跳躍する。


悪魔の真上にきたメイは急降下し、悪魔の両翼を胴体から切り離した。


そのまま某最強の兵士長のような動きで足に切り込みを入れて悪魔の体勢を崩すと、そのままうなじを削り取った。



オォォォォォォ....



「っあ“あ”あ“あ”ぁぁぁぁぁ〜...」


悪魔が雄叫びをあげ、光となって消えていく様子を見ながらメイは唸り声をあげる。


自分の動きを思い出しながらメイはボソッと呟く。


「...なんとか真似できた。」


とあるアニメにすごく影響を受けているメイであった。





*************************************************************************************



メイが特攻を始めた頃、カエデも大型悪魔と睨み合っていた。


「突然突進してくるなんて...びっくりするじゃないですか!!」


カエデは足を強く踏み出し悪魔に迫ると、悪魔はどこからか大槌を取り出しカエデに向けて振り下ろした。


悪魔の振り下ろす槌に合わせて、カエデも棍棒をタイミングよく背中から大きく振った。


お互いの武器が触れた瞬間、轟音とともに激しい衝撃波が周囲へ波紋状に広がった。激突の拍子にお互いの武器から火花が散る。


お互いの力は互角、鍔迫り合いは互いに一歩も引かず拮抗する。


「うぐぐ....ぬん!!!」


カエデが棍棒に力を込め、大槌を弾くと一度後ろへ跳躍する。


そのタイミングで悪魔は拳を繰り出し、それがカエデの腹に直撃した。


衝撃でカエデはしばらく転がされ、木に衝突して動きが止まる。


「ぐふ...」


カエデは腹を押さえながら、棍棒を支えにして起き上がった。


このまま自分がこの悪魔に手こずっていたら、ナギやメイにかかる負担が大きくなる。


早々にこの悪魔を倒す必要があるのだ。


カエデはここであるスキルを発動することに決める。


「〔鬼剛力〕!!」


カエデの身体が赤黒い光に包まれ、身体能力が大幅に上昇する。


手に持っている棍棒さえ、綿棒のように軽く感じる。


「さぁ、いきますよ!」


カエデが棍棒を構えながら足を一歩踏み込むと目の前の景色が瞬く間に移り変わり、気づいた時にはカエデは悪魔の目の前にいた。


この速さは流石のカエデも予想外だったが、カエデは構えていた棍棒をスピードに乗せて悪魔の腹に叩き込んだ。


悪魔は身体をくの字に曲げて吹っ飛び、地面に転がった。


カエデは追撃しようと再度棍棒を構えるが、ビシッと音が響く。


赤熊からの度重なる過度な使用により、棍棒の耐久度が限界を迎えたようだ。


あと1回、敵に攻撃を当てたら壊れるだろう。


カエデは両頬を叩いて気合いを入れ、悪魔に向かって駆け出した。


悪魔は先程の攻撃がまだ効いているのか若干動きが鈍いものの、再度攻撃を加えんと大槌を振りあげた。


「〔炎槍〕!」


どこからともなく飛んできたシルの攻撃魔法が悪魔の顔面に直撃し、悪魔が体勢を崩した。


「今だよカエデ!」


シルの声が聞こえた瞬間、カエデは駆け出し悪魔に肉薄する。



「らあァァァァァァァァ!!!!!!」


そしてバッティングのような動きで悪魔の胸元に棍棒を振り抜いた。





オォォォォ....



吹き飛ばされた悪魔は岩に背中を激突させ、キラキラと光となって消えていった。



「はぁ、はぁ、はぁ...」


カエデが膝をつき息を整えていると、ヒビの入った棍棒が寿命を迎えた。


根元からぽっきりと折れ、光となって消えていく木製の棍棒。


「今日始めたのにもう武器がなくなるなんて...」


早急に新しい武器を用意しなくては。


「終わったら師匠に相談しよう。」


そう心に決めたカエデであった。




「カエデも終わった?」


メイとシルがカエデに駆け寄り、無事を確認すると周囲を見渡す。


「ナギ兄ちゃんは...いた。」


メイの視線の先にはアモンと激戦を繰り広げるナギがいた。


その動きを目で追えるのは、ここにはメイしかいない。


「...私には何かが動いてるってことしかわからないですね。」


カエデの呟きにシルが同意する。


「私にも全くわからないよ?」


「というか、他の悪魔は?」


メイに言われて気が付いたシルとカエデは周囲を見渡すが、悪魔の姿が見つけられない。


「まさか...ナギ兄ちゃんが全部倒したんじゃ....?」


シルの呟きにメイもカエデも何も言えない。


「とりあえず、助太刀に行こう!」


「そうですね!」


「わかった!行こう!」


そう声をかけて3人はナギの元へ駆けていった。


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