第19話みんなでレベル上げ
「バトルロイヤル?」
「おう、まぁ予想通りだったな。」
達也は腕を組みながらうんうんと頷いている。
達也が第一回イベントの内容を確認したところ、どうやらプレイヤー同士のバトルロイヤルらしい。
舞台は直径10キロメートルの円状の中に岩場、草原、海辺、森林、山、街のフィールドがあり、その中でランダムかつ等間隔に配置される。
制限時間内に他プレイヤーをより多く倒した人の優勝となるのだ。
あくまで個人戦のため、複数人で倒した場合は最後の一撃を喰らわせた人のカウントとなる。
制限時間は150分、時間内にHPが全損したプレイヤーは敗退となり、敗退したプレイヤーはイベント中観戦席で残り時間は試合を見ながら待機することになる。
倒した人数が多い上位10人にはイベント限定特別報酬があるようだ。
全プレイヤー参加ではないこのイベント。本日10時から参加申し込みが開始し、イベント開始30分前まで受け付けている。
「だけど個人戦かぁ...このメンツとは当たりたくないなぁ」
紗良が顔を引き攣らせながらそう呟いた。
「その意見には賛成ね。開始早々に当たってしまったら確実に上位入れない可能性が高くなるもの。終了ギリギリで遭遇するのはしょうがないけど。」
香織が紗良の意見に賛同した。
「レベル上げをイベントまでに頑張らないとね、上位10人には残りたいから。」
皐月が気合を入れるように拳を握りながら答えると、突如として渚の方に顔を向けた。
「渚にいちゃんのレベルは上がるの早かったよねぇ。よければレベル上げ付き合ってくれない?」
「あ!私も!」
皐月と言葉に紗良も同調する。
確かにこの二人は渚と同じくゲームをはじめばかりで渚のような凶悪なレベル上げはしていない。
そのため、上位ランクのプレイヤーと比べてもレベルがとても低い。
「わかった。でも森と草原しか知らないよ?他の場所にはあまり行ったことないし。」
渚はブラッドベアと戦って以降、レベル上げは他の場所で行っていた。
森や草原では出現しないモンスターと戦ってみたかったのである。
草原では角ウサギ、森ではブラッドベア以外には虫型モンスターばっかりだった。
「私たちは森にはそんなに行っていないから、むしろそこがいいかな?」
皐月が腕をワキワキさせながらそう言った。
紗良も横でうんうんと頷いている。
「ん、おっけ。」
渚がそういうと
「じゃあ私も行こうかな。」
香織も同調する。
「俺も行くか。」
達也も同様。
「二人が戦っている間は僕たちで他のモンスターを間引くということで。」
「「異議なし」」
渚が雰囲気を出すために敬礼すると、達也と香織も敬礼した。
「お兄ちゃんたちほんとに仲いいよね...」
紗良と皐月の呟きは渚たちには聞こえなかった。
**********************************************************************************
「ナギは1位狙うつもりなのか?」
ロイは森に向かって歩く途中で聞いてきた。
「うーん、僕の力じゃあ無理だと思うけど。上位10人には入りたいと思ってるよ?」
ナギは頬に手をつきながら何かを考えるようにそう答えている。
「そのためには、もっとレベルを上げておいた方がいいかもしれないなぁ。」
多分このイベントの参加者は実力派が勢揃いだろうから、開始までに少しでもレベルを上げておくに越したことはないだろう。
ナギは1人で密かに気合を入れた。
そんなことを話しているうちに森の入り口についた。
「さぁ、メイ!シル!ブラッドベアには遭遇しないように狩りに行こう!」
「「おー!」」
ナギがかけ声を上げると二人が反応した。
そう言って森の中へ入っていくと早速特大のムカデが襲いかかってきたため、ナギはとりあえず側面から蹴りを入れて強制的にムカデに距離を取らせる。
「ほらシル。攻撃しな。」
「うん。“火炎球“行けぇ!!」
倒れたムカデに向かってシルは〔火属性魔法〕の“火炎球“を放った。
ムカデは炎に包まれ、しばらくのたうちまわった後に光となって消えていった。
「森のモンスターって結構簡単だね?」
そうシルが呟くと「あ」と呟いた。
「どうしたの?」
「レベル上がったよ」
「ほんと?今レベルいくつ?」
「13だよ。」
シルが自分のステータスを見ながら「経験値結構多いな」と呟いているのが聞こえる。
メイも同じタイミングで両手の短剣でカマキリ型のモンスターを倒していた。
「ホントだ、ここのモンスター経験値高い!」
シルと同様、メイも嬉しそうにしている。
「じゃあ僕もレベル上げ始めようかな。」
ナギも〔龍の爪〕を発動させ素早く動き出すと、周囲のモンスターを切り刻み始めた。
「お兄ちゃんには負けてられない!私も!」
シルも負けじと〔風属性魔法〕と〔火属性魔法〕、そして〔杖術〕を駆使して怒涛の勢いでモンスターを倒し始める。
メイも〔アクロバティック〕スキルを駆使し木の上に潜むモンスターを〔短剣術〕によって倒しはじめる。
森の一区画が血の海になっていく様子を眺めながら、ロイとフレイヤはぼんやりとしていた。
「なぁ、フレイヤ。」
「なに?」
「...これ、俺ら来なくてよかったよな。」
「まぁそうね。」
自分たちで行くと言ってしまった手前、すぐ帰るとも言えないから待機していたのだが。
ここら周辺のモンスターは彼らにとっては弱すぎるため大したレベル上げにはならないのだ。
「まぁ、スキルレベルを上げるためとでも思えばいいか。
「〔刀術〕スキルのスキルレベルをもう少し上げたいから、私も頑張るわ。」
「おう、俺も〔剣術〕スキル上げないと、ナギには絶対勝てないからな!頑張るぜ!」
そう言って二人もモンスターに向けて駆けていくのであった。
・
・
・
・
「ナギ、今どれくらいだ?」
「うーんと、レベルが2くらい上がったかな?シルとメイはどう?」
「10くらいレベル上がったよ!MPも残り少ないし、今日はこれくらいでいいかな?」
結構消耗したようだ。見るからにフラフラしている。
今日はもうログアウトした方が良さそうだ。
「じゃあ今日はもう落ちようか。ここでログアウトすれば次のログイン場所は噴水の前だし。」
そう言ってナギはまた一体、バッタ型のモンスターを蹴り飛ばす。
会話している間にも容赦なく襲いかかってくるモンスターを片手間に倒し続けるナギに全員苦笑いをして、ログアウトをしていった。
その後、森から一時的にモンスターがいなくなってしまったことを知った5人は、静かに頭を抱えるのであった。
**********************************************************************************
「ん...身体痛いなぁ..」
次の日、身体の痛みで目を覚ました渚。
最近、全身の痛みがさらに増してきているみたいだ。
どう表現したらいいのだろう。
身体の一部が押し込められていくような感じもあるし、逆に身体の一部が外に押し出されているような感覚もある。
身体が別の何かに変わってしまうような...
今日は病院に行ってみることにしよう。
日常生活を送るのに支障はないが、こんなに続くとなぁ...
さすがにこうも連日痛みが続くのは心配になる。
病気とかあっても困るから。
そうと決まれば、今日はもう起きよう。
朝ご飯を作るには少々早いが、手の込んだものを作ればちょうど良さそうな気もする。
自分で最初から食パンを焼くところから始めるとかね。
やったことないけど、試してみよう。
「渚くんってホントに多才だよねぇ」
渚の料理の手捌きを見ながら香織はぼやいた。
まだ起きたばっかりの香織は、まだ目が完全に覚めておらずお茶を飲みながらポヤポヤとしている。
もうご飯を食卓に並べておりみんな席についているが、誰一人として完全に目を覚ました人はいないみたいだ。
香織はいつもこの時間は大丈夫なのに、珍しいこともあるもんだ。
なにはともあれ、褒められたことには礼を言っておく。
「ありがと。はい、僕は出かけなくちゃいけないから早く食べちゃって!」
その言葉を聞いて、みんなが怪訝な顔をする。
代表して紗良が尋ねる.
「出かけるの?」
「うん、ちょっと病院行こうかと思って」
・・・・・・
「「「病院!!!???」」」
「どうしたのみんなして、びっくりしたなぁ。」
急な大声に渚はビクッとしてみんなを見る。
しかし、それ以上に達也たちもびっくりしている。
先ほどで目が完全に覚めたみたいだ。
「大丈夫なの!?渚くんが病気だなんて!ホントに悪いんじゃ...?」
「滅多に風邪も引かない渚にいちゃんが病院行くほどだよ!?悪くないわけないじゃん!!!」
「そうだよ!お兄ちゃん、誰かに付き添ってもらった方がいいよお母さんに連絡してくる!お姉ちゃんにもきてもらった方がいいよ!!」
女子3人が大慌てで騒ぎ出した。
その様子を見て達也が渚に聞いてくる。
「なぁ、大丈夫なのか?」
達也も騒ぎはしないが、心配してくれているようだ。
「うん、ちょっと気になることがあるだけだから。気にしないで。」
こんなに心配してくれる人がいるなんて、幸せなことだ。
しかし、出発するときはこっそり行くことにしよう。
騒ぎのせいで近所迷惑になることを心配した二人はそんなことを考えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます