第15話もう初心者は名乗れない
「最初は普通に森でモンスターを狩ってたんだよ。」
渚は大雑把に説明することにした。
「そしたらなんかひらけたところに出てさ?赤黒い毛の熊が襲ってきたから倒したんだよ。」
森で赤黒い熊・・・?と達也が呟いていたが特に気にせず話を続ける。
「そしたらなんかクエストが始まって、どんどん湧いてくる熊を倒し続けたらこうなった。」
「・・・・・達也?香織?おーい。どうしたの?」
話し終えて顔をあげると呆然とした顔で固まっている二人がいた。
目の前で手を振るとハッとしたように動き出す二人。そして何やら真剣な顔で言葉を発した。
「渚、それって熊のサイズがマンションくらいあるやつか?」
マンションくらいあるやつ?もしかしてボス熊のことかな?
「うん、最後に出てきたやつはそれくらいの大きさだったよ?何回か死にかけたけどギリギリで倒せた。」
始まりの街に一番近い森ででる敵じゃないよねぇ、と笑う渚。
「・・・・香織、これって多分あいつだよな?」
「えぇ、森のでかい熊といったらそれしかないでしょう。」
達也と香織が何やら話をしている。そして渚に向けて言った。
「渚、俺たちも初日にそのクエストやったよ。」
「本当に!?あいつら攻撃がものすごく痛いんだよねぇ」
渚は振り下ろされる腕の重量感と鋭い爪の痛みを思い出しながらそう答えた。
「まああいつらは攻撃力が結構高いやつだからなぁ」
達也は仲間が攻撃を受けた時のHPゲージの減少具合を思い出しながらそう答えた。
「あれは絶対一人でやるものじゃないよ。達也たちにも手伝って貰えばよかったなぁ。」
「ん?」
「え?」
素っ頓狂な声を上げた達也に顔を向ける渚。
何か変なことを言っただろうかと考えを巡らせていると、香織が質問してきた。
「えーと、渚くんはそのクエストを誰とクリアしたの?」
「え?一人だけど?」
香織が目に見えて固まった。まぁじきに元に戻るだろう。
「それに、熊に腕噛まれたり斬られたりしたんだけどさ、すんごく痛かったんだよ。現実でもやられたらあれくらい痛いんだろうなぁ....」
痛みというのはセンサーでもあるから大事なんだけどね、あの痛みはもう体験したくないなぁ、と考えていると達也と香織は顔を見合わせて怪訝な顔をした。
「痛かった....?」
「え...なに?さっきから。どうしたの?」
渚は訳がわからないと言った感じで首をこてっと横に傾けた。
「このゲームでは痛みって感じないんだよ。普通は。」
あれ?そういえばそうだったかな?
達也の言葉にクエスチョンマークを頭上に出す渚。
「本来感じないはずの痛みを感じるってのは、痛みに耐性がない現実の脳にかかる負担が大きい。これは早急に対応してもらわなきゃな。下手すると脳が負担に耐えきれず壊れてしまうプレイヤーが続出するぞ」
次ログインしたら絶対にGMに報告しとけよ?と達也は渚に念を押した。
その後に香織が、ところで....と切り出した。
「森の熊のクエストだけど、私たちはβテストの仲間とパーティ組んでクリアしたんだよ?」
「いいなぁ、僕も誰かに付き合って貰えばよかった。」
「いや、そういうことじゃなくってね?あのクエストって本来ソロでやるものじゃないから!私たちみたいにたくさんのプレイヤーでパーティ組んでいくものだから!!」
大量のお金はそういうことだったのね....と香織が納得したように言った。
「というか、あれをソロでクリアするって余程高いレベルじゃなきゃ難しいと思うんだけど。渚くん、あなた今レベルはどれくらい?」
香織はずいっと危機迫るような顔で渚に詰め寄った。
「えーっとね、確か30をちょっと超えたくらい?」
渚はすごい剣幕の香織に多少慄きながら自身のレベルを答えた。
「レベル30であれをソロクリアって....渚くんの戦闘スタイルがとても気になるわ。」
「まぁそれは今後一緒にゲームやればおのずとわかるでしょ?」
皐月がオムライスを全て食べきってお腹をさすりながら言った。
「でも羨ましいな」
「なにが?」
皐月がテーブルに頬杖をつき呟くと、それを聞いた渚が問いかけた。
「そんなにお金が貯まったならとうとう初心者装備卒業できるじゃん!!」
いろんなところから選び放題だよ!と皐月は言い項垂れた。
紗良もそれを聞いて「確かに」というと
「多少高くても専用装備をプレイヤーに作ってもらうのもいいよね!お兄ちゃん可愛いし!」
と笑顔を浮かべながら言った。
お兄ちゃんにはどんな服が似合うかな...と考えを巡らせているが、これは言っておかなければ。
「色々考えてくれてるところ悪いんだけど、装備はもう大丈夫だよ。」
「大丈夫ってどうして?」
紗良はちょっと悲しそうな表情で渚を見る。
「クエスト報酬で装備があったんだ。だから今それをつけてる。しばらくはこのままでいいかな。」
そういった瞬間、渚以外の全員がガバッと渚へと顔を向けた。
「「「「クエスト報酬で装備をもらった!?」」」」
「う、うん。そうだけど。」
そういうが早いか、達也が渚の肩を両手でガシッと掴むと
「....見せろ」
「は?」
「今からログインするから」
「...」
「見せろ」
「....片付け終わったらね。」
「早めにな。」
「じゃあ手伝って。」
「「「「うす」」」」
その日の片付けが今までで一番効率がよかったのはいうまでもない。
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こんばんは。ナギです。
今、ゲーム内の宿屋の大部屋にいます。10人くらいが泊まれるくらいの。
どうやら貸し切ったらしい。
そして
「.....で、今着てるのが例のやつか?」
「そうだけど....」
今、ナギは新装備のお披露目をしている。
ロイが装備の効果を見ながら「すごいな...」と呟いているのが聞こえる。
しかもユニーク装備というの教えた時には目がカッと開いて装備を凝視していた。
そういえば
「今更だけど、血ってついてるとなんだか吸血鬼が種族みたいに思われそうだなぁ。」
「え?違うのか?」
「え?違うよ?」
「「・・・・・・・」」
まぁ、知らない人に装備を詳細を見せることなんてないだろうから気にしない。
そう考えることにした。
「それにしても、お前本当に女の子だな」
ロイがナギの全身を見ながらそう言った。
「もう諦めたよ」
これは自分の努力でどうこうできるものではない。
今も赤と黒に包まれた服装に銀色の髪がよく映えている。
「「「か....」」」
「か?」
フレイヤ、メイ、シルがナギを見てプルプルしている。
ナギが部屋に入った瞬間から時間が止まったように停止していたが、ようやく再起動したようだ。
ロイは何かを察したように部屋の端に寄った。
その時、ナギの脳が警鐘を鳴らし始める。
なんだろう、このとても見覚えのある反応は...
あ、思い出した。
これはあれだ。何年か前に僕を女装させて楽しんでいたあれだ。
「「「・・・・かわいいィィィィィィいいいいいい!!!!!!!!」」」
「ひっ!!?」
敵意や殺意などは敏感に感じ取れるナギでも100%好意は感じ取ることができず、反応が遅れた。
しかし、恐怖は感じた。
次の瞬間、フレイヤ、メイ、シルはナギに飛びかかり、ナギはもみくちゃにされる。
3人が満足する頃には、既にナギの目に光は残っていなかった。
名前:ナギ
種族:龍種
性別:女
所属ギルド:なし
Lv.33
HP:425
MP:580
STR(筋力):480
VIT(生命力):150
AGI(敏捷性):535
INT(知力):230
MND(精神力):200
LUK(運):33/100
満腹度:78%
所持スキル(戦闘):
〔龍魔法〕Lv.32(種族固有)
〔龍の爪〕Lv.40(種族固有)
〔龍の威圧〕Lv.1(種族固有)
〔龍化〕Lv.ー(種族固有)
〔格闘術〕Lv.48
〔錬成武装〕Lv.7
〔纏気〕Lv.5
所持スキル(日常)
〔龍の翼〕Lv.13(種族固有)
〔身体強化〕Lv. 25
〔MP回復強化〕Lv. 30
種族特性:
《龍の鱗》・・・物理攻撃力上昇及び物理、魔法攻撃力耐性上昇。
称号:
【単独制覇者】【森の主を超えし者】
装備:(服装)・・・ユニーク装備【赫血】
装備:(武器)・・・【妖刀“穿血刃“】
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