第128話 - 多数決
––––ズズズズ……
葉山が呼び出した〝
「細かくなったな、
ここで初めて白髪の男、
そのしゃがれた声は明らかに十二音の他のメンバーよりも年長であると予想できる。目の部分の穴からはグレーの瞳が覗き、変わり果てた姿の内倉の肉体をじっくりと見ている。
「若者ばっかりになって悲しい?
「ふん、ここには物珍しい者たちしかいないだろう。人間かどうか怪しい者もいるしな」
「……」
女は全くの無反応で微動だにせずに正面だけを見つめている。女の名は
「相変わらず不思議な
「えぇ、
「便利だね〜」
葉山の創り出す〝
別の〝
「さて、本題ですが……」
葉山が両手をパンッと勢いよく叩き、全員の注目を集める。
「こちら
葉山は明るい声で全員に問いかける。その場にいる者たちは誰一人として手を挙げることをせず、沈黙が流れる。その様子を見て葉山は弾け飛ぶような笑顔で内倉の方を振り向いて話しかける。
「良かったじゃあないですか、
内倉は葉山のその無邪気の笑顔がより恐怖を掻き立て、少し呼吸が早くなる。
「そんなことのために呼び出したのか?」
「そんなことじゃありませんよ、
「何を大袈裟な」と
「ここに政治家ごっこを持ち込むのはやめろ、
葉山は少し笑いながら
「いや〜日頃の癖がついね。でも僕がこのポジションにいることで退屈はしなくなってきたでしょ? ねぇ、
「さてと、僕らは基本的に個人行動、暇つぶしのために、そして気紛れに世の中に出ては
葉山は少しだけ真剣味を増した表情で全員に話しかける。
「もっと楽しくなるように世の中の人たちを超能力者にしたいと考えています」
葉山は一度言葉を切り、マスクを着けた面々を見渡す。
「基本的にここの皆さんは戦闘狂ですからねぇ〜。その方法を探るのに僕の恩師である『月島瞳教授』のサイクス遺伝学が鍵を握ると思っています。なぜならあれだけ膨大なサイクスを持った彼女の長女・愛香さんが後天性だったとはいえ、非超能力者として生を受けたのですから。さらに……」
葉山は
「覚醒者に関しても科学的アプローチが可能だと考えています。そちらの方がより楽しくなりそうじゃあないですか?」
葉山は机に備え付けられているキーボードをいじった後に中央から白井康介の映像と東京都第10地区のマップを表示する。
「皆さんもよくご存知、覚醒者に関する人体実験。それについても探りを入れております。まぁそのために管理委員会に入って白井さんと接触できるようにしたのですが」
葉山は
「残念ながらまだまだ資料が足りませんが、僕らも独自に研究をしています。サンプルが沢山必要なので、皆さんには覚醒者となりそうな方々をマークしていただいております。近藤さんもその一貫だったのですが……」
ここで葉山は再び内倉の方を見る。
「さて
葉山は内倉に祝福の言葉をかけた後に不気味な笑みを浮かべる。その笑みは内倉だけでなくその場にいる十二音全員をも戦慄させる。
「今、言及しましたが僕らサンプルが必要なんですよ、覚醒者に関して。
内倉の呼吸がさらに早くなり、過呼吸気味になる。
「安心して下さい、
葉山は少し言葉を切った後に次の言葉を続ける。
「あなたが守ろうとした月島瑞希さんも大事にしますよ。彼女にはまた別にやってもらわないといけないことがありますから」
そう告げた後、葉山は立ち上がるとメスを取り出して内倉の脳と心臓、そしてそれを繋ぐ血管を取り出した。その様子を見た
「さてと、それじゃあ今度は松下さんの方へと話題を移しましょうか」
葉山は今行われた残酷な行為にも何事も無かったかのように笑顔を崩さず淡々と話を続け、次の話題へと皆を促した。
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