第103話 - 狂気
(ノータイムで
花は瑞希の胸に現れた黒い渦から
一方で
––––ヒュンッ
(
花は仁の一撃の後に起こった風圧を手で顔を覆いながら防御し、戦況を見つめる。
––––ズズズズズ……
「出血していない!?」
両腕を切断されても切り口から出血せずに余裕の表情で笑う
その渦の中心から今しがた上空にあった右腕が指を尖らしながら現れ、仁を背後から刺突しようとする。仁はその攻撃を躱すと瑞希をお姫様抱っこの形で抱きかかえて離脱した。仁は黒いサイクスの渦が現れた胸付近と額に手を当てて異常が無いかを確認する。
(今のところ異常は無いが、みずを中心として展開されているこの黒いサイクスの囲いは消えんな……。奴の超能力であろうことは間違いない)
仁の背後にあった黒いサイクスの渦はすでに消滅しており、上空の両腕は何事も無かったかのように
「ウフフ。安心してその子にはまだ何もしないわよ」
そのまま後ろの倒れている近藤と手錠と異不錠をかけている町田の方を見る。すると今度は近藤を中心に黒いサイクスのドームが生成されて町田ごと覆う。
「!?」
町田が反応する間もなく目の前にメスを持った
「あら、この中にいると危ないわよ?」
「な……何だ!? どうなってんだ!?」
身体から切り離された町田は痛みを全く感じておらず、首だけで話している。
「不思議でしょう? 慣れれば切り離された身体も動かせるわよ」
すぐさま鈴村は気絶している萌と結衣を、同じく気絶している田川と和人、金本を柳が抱えてその場から離れる。ほぼ同時に花も2人についてその場から離れて距離を取った。
「良い判断ね」
柳は隣にいる花にウィンクしながら告げる。
仁は瑞希の額に手を当てたまま
「この中では私からいくら刻まれても痛みを感じないし、死なないから安心してね」
近藤の身体は
「回収〜♡」
その後、抜き出した部分から黒いサイクスの渦が出現して飲み込まれて消失し、代わりに別の心臓、血管、脳が繋がれたものを出現させる。
「それはいらないからそっちで処理ヨロシクね〜」
そう言って出現した部位を近藤の解剖された身体が浮遊する中に投げ込む。
(何て残酷な……気持ちの悪い超能力なの……)
花は
「さっきはこの中なら大丈夫って言ったけど、ここから出たらどうなるか分かる?」
「フフフ。そんな意地悪しないわよぉ〜」
と言って町田の頬をなぞる。町田は少しだけ安堵の表情を見せる。
「うっそ〜♡」
そう言って
––––ブシュウッ!
首の切断面から勢いよく血が吹き出し、町田の身体は糸の切れた人形のようにドシャッとその場に倒れ込む。同時に町田の悲鳴が響き渡る。
「うわあああああああああ!!!」
その様子を見ながら興奮気味に
「あははははは!! 痛いでしょう? でもまだこのドーム内にいるからあなたは首だけで生きているのよォ! どんな気持ちィ!? 死を待つだけの無力なあなたは今、どんな気持ちなのぉ!?」
その狂気に満ちた笑いが交じった言葉に町田は涙を流しながら悲鳴を上げる。しばらく泣き叫んだ後に状況を覆すことは不可能だと悟った町田は静かに
「もう……殺してくれ……」
その言葉を聞いた瞬間に
「面白くないわねぇ。醜く生にしがみつきなさいよ」
「もう少し遊んでみようかしら」
町田の顔の中心から黒いサイクスの渦が出現する。
「!?」
仁は同時に瑞希の顔も黒いサイクスの渦に覆われていくことに気付いた。
––––ズズズズ……
瑞希の頭部は涙で汚れた町田の頭部に変わり、一方、瑞希の頭部は
「あぁ……」
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