第67話 - 大浴場
「私は1人だけ4歳上で気まずいからパスで」
「私も恥ずかしいからパスで」
萌の全員での大浴場への入浴宣言に対して芽衣は拒否し、瑞希はそれに乗じて逃げようとする。
「瑞希は却下」
「志乃ちゃん!? 志乃ちゃんはこっち側じゃないの!?」
予想はしていたもののその発言者が志乃だったことに瑞希は驚いているのだ。
「こっち側って? あー、せっかくのお泊まり会だし大浴場まであるなら皆んなで入りたいよねって。あとは……瑞希の裸見たいよね」
志乃がイタズラっぽく笑い、瑞希は出発前以上に顔を真っ赤にして「スケベ」と呟く。
「みずちゃん、志乃ちゃんって結構中身おっさんだよー」
萌がそう言うと志乃に軽く
(私、皆んなで温泉って初めてなんだよなぁ……恥ずかしいなぁ……)
瑞希は家族以外には上野菜々美としか入浴したことはなく、脱衣所で他5人の様子を窺っている。
(皆んなが入ってから脱ごっかな……)
瑞希がそう考えていると、既に衣服を脱いで浴室へと向かおうとする結衣に見られ、彼女は瑞希の考えを見抜いたのか騒ぎ始める。
「萌せんせー! 月島さんが皆んながお風呂に入るの待ってまーす!」
「何ですと!?」
萌も志乃も結衣の悪ふざけに乗り、瑞希を脱がせようとする。
「分かった、分かった! 脱ぎます! 自分で!」
瑞希は観念して脱ぎ始める。萌たちは「いえーい!」などと騒ぎながら大騒ぎしている。見かねた綾子は3人を先に行かせ、瑞希を待つ。
「みずちゃん、タオルで体隠すのはマナー悪いからね〜」
去り際に萌はそう言って大浴場へと向かって行った。
「そうなの!?」
「いや、湯船につからなければ良いよ」
そう言って綾子は瑞希を少し安心させる。瑞希はタオルを身体に巻いて中に入る。それを見た志乃から「旅番組のレポーターか」と突っ込まれ、泣く泣く巻いているタオルを取る。それでもタオルを真っ直ぐ垂らして胸から下半身までを覆っている。
「最初は恥ずかしいよね」
綾子はそう言って瑞希は「綾子ちゃん優しい」と言って彼女にぴったりくっ付いている。
「瑞希のおじいちゃんって近くに住んでるの?」
綾子は「肌スベスベ」と呟きながら瑞希の背中を洗う。
「んー、ここからだとそんなに近くないかなぁ。最低でも30分はかかると思う。第3地区なんだよね」
「糸島って言われてたとこだよね? あそこ珍しいお魚たくさんなんだよね」
隣で聞いていた結衣が口を挟む。
「そうそう。おじいちゃん1日中釣りしてたよ」
綾子が瑞希の背中の泡を流すと「ありがとう」と瑞希は告げ、交代する。
「さっきチラッとネットで検索したんだけど超能力者としても凄いって書いてたよ。どんなのか知ってるの?」
「んーん、私知らないんだよね。お母さんも含めて固有の超能力を使ってるの見たことないんだよね。ちなみにお祖母ちゃんとお父さんは非超能力者だよ」
瑞希が答えると「へー、意外」と既に湯船に浸かっている志乃が呟く。
「きっとお魚に関する超能力だよ!」
「でもそれなら釣りとかわざわざする?」
「うち、超能力に頼り過ぎないっていう考えも持ってたし、あと単純に釣りが好きって言ってたよ。海の側でのんびりできて気持ちいいって」
結衣と萌の会話に対して瑞希が答える。瑞希は綾子の背中を流した後に結衣と3人で既に湯船に浸かっている志乃、萌、芽衣と合流する。
「極楽、極楽〜」
結衣の言葉に釣られるように瑞希も綾子も気持ち良さそうに湯船に浸かる。その時、結衣が思い出したかのように手を「パンッ」と叩き、赤いサイクスを放つ。
「丁度いいや、私の超能力見せてあげる!」
そう言うと結衣は水風呂へ移動し、潜水する。しばらく経っても浮上してこないため、瑞希は心配になってお湯の中を覗くと結衣は余裕の表情で寝っ転がっている。少し驚いている瑞希を見て笑うと浮上して水風呂から出てくる。
「私、水中の中で呼吸できるんだ。あと水中内での身体能力が上がるの。他にもちょこっとあるけど明日海で見せたげる!」
ウィンクしながら話す。全員から歓声が上がる。
#####
6人は十二分に入浴を堪能した後に脱衣所へと向かい、身体を拭いている。各々下着を身に付けた後にパジャマに着替える。すると綾子が5人に声をかける。
「皆んな、マッサージ室来て!」
全員がマッサージ室へ入ると綾子は瑞希に横になるように促し、両手に赤いサイクスが込められる。未だ〝フロー〟を修得しきっていないため(クラスマッチの際に瑞希に習っていたものの〝フロー〟は2年生での学習範囲である)、サイクスの移動に少し時間を要した。
「今度は私の番だね!」
––––〝
西条綾子の身体刺激型超能力。両手にサイクスを込めて対象者に触れることで、対象者のサイクスに刺激を与えて流れを滑らかにする。また、血行促進を促して血流を改善する効果も与える。肌の状態を向上させ、そのままマッサージを行うことで肩こりや冷え性を改善する。また、負傷箇所の痛みを一次的に失くすことができる。
綾子はそのまま背中に触れ、マッサージを施す。
「んっ……」
瑞希は気持ち良さそうな声を上げ、そのまま身を任せる。
「めっちゃ気持ち良い……。このまま寝ちゃいそう……」
言葉通り瑞希は目を閉じる。「私も!」と他の4人もマッサージを要求する。その後、順番に綾子のマッサージを受けてリラックスし、旅の疲れを癒した。
「枕投げとかしたかったけどもう寝たい……」
萌はそう呟いた後にアンドロイドに指示して広間に布団を敷かせる。
「皆んなで一緒に寝よーよー」
5人は同意し、並べられた布団に身を包み、綾子の〝
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