File 2 異世界パニック

2章プロローグ

 異世界のゲートの前に剣持けんもちとルビーがいる。


「向こうは、どうなっているんだい?」

「100%の力で開けたゲートよ? 恐らく異世界に繋がってしまっている」

「調査する必要は?」

「したい者に任せておけばいい。人間であれ、怪異であれ。だけど、向こうから何かが来るかもしれないから、監視は必要ね」


 そう言うと、ルビーは踵を返した。剣持も後に続く。


「それと、異世界の鍵は回収されたわ。もう人間の世界には出てこないでしょう」

不室ふむろ成戸なるとがいるからか?」

「そう。ゲートを完全に開けることのできる者が現れた以上、現世にあったら世界のバランスが崩れてしまうから」

「本当に成功しないことを前提とした魔具だったんだね……」

「気持ちが高ぶり過ぎて駆け落ちや心中をしようとする男女をたしなめる効果はある物だったでしょう? 本来はその程度の用途のもの」


 屋上の扉の前まで来ると、二人は振り返ってゲートを見た。


「このゲートが災いの種にならなければ良いんだが……」

「あら、私は別にそれでも構わないのよ」

「怖い人だ……」


 ゲートはそんな二人の言葉に答えることもなく、ただ怪しい光を放っていた。

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