第24話 ドブスは絡まれる
お昼休み。机でお弁当。今日はパパが作るって言うからお願いしたけど。
やっぱり……白ご飯の上にステーキがどんと乗ってる。元気を出すには肉が一番だって言ってたけど、これはひどい。でも嬉しい。パパありがとう。
うーん、どうやって食べよう……箸しかないのに。あっ、 箸で切れる。柔らかい……美味しい。
「あーごめーん」
いきなり机を蹴られた。お弁当は無事だ。いち早く持ち上げたから。あまりないパターンだけど想定内なのでギリギリ対応できた。
「机を起こして。元通りにして。」
「はあ? 自分でやれば?」
「だせぇ弁当食べてさあ! 何よ肉と米って!」
「貧乏は辛いねー」
この肉は米沢牛A4ランクのサーロインだと思う。たぶんうちは貧乏ではない。お米はいつものコシヒカリだし。
「いつもは誰がやったのか証拠もないから黙っている。でも今回は明らかに目の前であなたがやったこと。謝る気も戻す気もないんだね?」
「な、なによ! ブス香のくせに!」
「九狼君の彼女だからって調子に乗ってるのよ!」
「どうせ九狼君の遊びなんだから! すぐ捨てられるくせに!」
話が通じない。本当に同級生なんだろうか。
「最後だよ。元に戻して。」
「戻さなかったらどうすんのさ!」
「まさか3人相手に勝てると思ってるの!?」
「うわー怖ーい。暴力反たーい」
喧嘩なんかするはずがない。こいつらの頭の中身は一体どうなっているんだ。
私は食べ終えたお弁当をしまうと立ち上がり、この三人の机の位置を確認した。
最初はここだ。
私がやるのはただの下段突き。
一つ目の机が……残念、割れなかった。ヒビだけだ。
次はこっち。
今度はかかと落とし。
うん、きれいに割れた。
最後はこの机かな。
下段の肘打ち。
うん、すぱっと割れた。
「私の机を元通りにしたらこっちもこの机、明日までに元通りにするけど?」
返事がない。
「返事がないからこの話はこれまでね。私は自分でなおす。だからあなた達も後は自分で好きにやって。」
まったく、他人に蹴り倒された机を自分で起こすというのは酷く屈辱的だ。教科書は入ってないから起こすだけなのだけど。
あいつらはあたふたと慌てるだけで何もしようとしていない。机の代わりなんて備品倉庫にいけばいくらでもあるのに。そして壊れた机は廃品収集場に持っていく必要もある。そんなことも知らないのか。しかも誰が壊したのかに関係なく持ち主が費用を払う必要まである。私の場合はママからいくらでも新品に取り替えろとは言われているが、落書き程度で替えるつもりはない。机を隠された時なんかに新品を運んでくることもあったかな。
そしてお昼休みが終わり、あいつらは呆然と椅子に座っている。教室の雰囲気は異様だけど先生は何も気にせず授業を進めている。ふふ、平等な学校だなあ。城君へのお土産話にいいかも。
そして放課後。城君の病院まではタクシーを使う。ちょっと贅沢だけど少しでも早く会いたいから。
それなのに男の子達に囲まれてしまった。服装から判断するにバスケ部かな。
「うちの弁田がお前を襲ったことになってるらしいな。あり得ねーだろ!」
「ご用件は?」
3年生かな。どう考えても私は襲われたよね。あの恐怖は経験しないと分からないと思う。
「ふざけんな! 弁田がそんなことするわけねーだろ! あいつをはめてどうしようってんだ!」
あまりにも状況が見えてなさすぎる。
「あのですね。事態はすでに警察が預かるところまで行ってます。証拠も揃ってます。男性である先輩にあの恐怖を理解しろと言っても難しいと思いますが。」
「じゃあ何か! 弁田が本当にお前みたいなドブスを襲ったってのか!」
酷い言われようだ。
「弁田君は私を部室まで誘導し、その後身柄を押さえつけました。私に対して行為に及ぶ気はなかったようですが、サッカー部の4人がやりやすいように補助はしてました。」
どう見ても共犯だよね。
「べ、弁田がそんなことするはずが……!」
そもそも弁田君じゃなくても私相手に婦女暴行をしようとする男なんかいないよ。だから私がはめたって言いたいんだろうね。私に何一つメリットがないのに。
「知りません。本人に聞いてください。もっとも数年は塀の中から出てこれないとは思いますが。」
司法取引次第では早めに出てくるとは思うけど、その辺りは私もよく分からないからな。厳罰を望む気はないけど、許す気もない。法律通りに処理するのがベストだと思う。
「塀の中……」
「鑑別所か少年院かは知りませんがね。」
特少ってことはないはずだ。私の知ったことではないけれど。
よし、みんな黙ったことだしタクシーに乗ろう。とても相手になんかしてられない。
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