紅の猿

作者 光田寿

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★★★ Excellent!!!

紫煙たなびくその先に、待ち構えるは病葉(わくらば)茂る館―
読者は再度足を踏み入れることになるであろう。
この世界すべてを司る原初の事件へと。
しかし様相は新しい図を描きだす。

ワトソン……『不在』
名探偵……『不在』

始まりの因縁は、異なる血を持つ者によってこそ
贖(あがな)うのだ


★★★ Excellent!!!

アメリカ合衆国が生み出した、偉大な文化が二つある。ひとつは非情で行動派の私立探偵の活躍するハードボイルド文学であり、もう一つは知能をもった類人猿だ。
まったくアメリカ人というやつは知能をもった類人猿に格別の思い入れがあるようで、キングコングは金髪のアメリカ人女性を恋をするし、猿の惑星は知能をもった類人猿の星を描いたSFだ。
アメリカン・コミックには類人猿のヴィランがあまたに登場し、ディテクティブ・チンプという探偵までいる始末だ。
そしてこの作品は、さながらアメリカの二つの文化を混ぜ合わせた上質なカクテルといったところだろうか。
主人公である「私」はオランウータンである。彼は類人猿でありながら人間以上にタフで、そして人間以上に優しい。
それは、ハードボイルドが現代においてはパロディとしてしか語りえないことの発露とも受け取れるし、あるいは現代においては人間ではなく類人猿こそがハードボイルドの主人公たりえるという逆説的な真理を語っているのかもしれない。
そしてこの作品は、ハードボイルド作品であると同時に、一種の名探偵論でもあることが終盤において明かされる。
現代においては、神のごとき名探偵がたったひとつの真実を見抜く物語は、存在するのが難しくなってしまった。法月綸太郎の例をもちだすまでもなく、我々はもはや名探偵という神話にメスを入れずして、無邪気に名探偵の活躍を語ることはできなくなってしまった。

最後に、作中においてあの曲を挿入する作者のセンスには脱帽です。

★★★ Excellent!!!

いままでの勢いだけの文章力、登場人物の喋り方ではなく、それが一般大衆向けに、まるで洋画を見ているみたいに面白い作品です。流れるように物語が進み、最後のどんでん返し。もうちょっと、私がミステリ狂者であれば、違ったコメントを書けるのだけど・・・映像化早よっ!!