第30話 次に呼ばれる美少女は誰だ!?
「シィダ。僕、ここに呼びたい人がいるんだ」
「え?」
シィダはビスケットから手を離した。
キョトンとした顔で僕を見る。
「サクラコって娘なんだけど……」
「ああ、あの時の」
シィダも王の間にいたからサクラコのことは知っていた。
僕はサクラコについて、軽くシィダに説明した。
「……その娘、ヒロアキのことが好きだね」
シィダは上目遣いで僕を見た。
何だか視線が鋭い。
「いいよ。呼んでも」
「ほんとに?」
「うん。シィダがその娘に負ける訳が無いもん」
そう言って、僕の腕に絡みついて来た。
おいおい、柔らかい何かが当たってるぞ。
ちょっとは気にしろよ。
「じゃ、行くよ」
僕は眉間を押さえ、集中した。
サクラコは僕が真の勇者だということを信じている。
ということは、彼女は僕の元に呼び出されるはずだ。
「ハーレム!」
……さぁ、どうだ?
「こ……ここは? どこ?」
背後から声がする。
小さくて大人しい感じの声だ。
高めのサクラコの声とは違う。
しまった。
違う美少女が召喚されたのか。
「あなた誰!?」
先にシィダが彼女に駆け寄った。
黒いローブをまとっている。
フードで顔が隠れていて、どんな顔かは分からない。
「私は呪術師のハンナ」
「ハンナ、よろしくね」
「……うん」
シィダがハンナの手を掴んで、ブンブン振っている。
ハンナの頭が振動でガクガク揺れている。
人懐っこすぎるぞシィダ。
「ねーねー、ヒロアキ、新しい仲間が出来たよ」
「う、うん」
シィダがハンナの片手を掴んで、引っ張る感じで連れて来た。
ヨタヨタとハンナは千鳥足になっている。
「シィダ、落ち着け。ハンナさんは訳も分からずここに来たばかりだぞ」
ハンナを落ち着かせるために、僕は見ずを手渡した。
彼女はそれを一気に飲み干した。
「ほぅ」
フードに隠れた顔。
水にぬれた唇だけが見える。
朱に染まった小さなそれは儚げだった。
袖で水にぬれた小さく尖ったあごを拭う。
「いきなりこんなところに来て、驚いてるよね。僕の名はヒロアキ。ここはラインハルホの領地なんだ。そこを任せられている。……そして、君をここに呼んだのは僕なんだ」
「うん」
小さく相づちを打つ。
「僕のハーレムってスキルで君を呼んでしまった。不本意なら元の場所に戻してあげるよ。といっても、一瞬で戻すことは出来ないから一緒に歩いて帰ることになるけど」
「ここがいい……」
「え?」
「私には帰るところが無いから」
つづく
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