永いエレベーター

 仕事で急なトラブル。


 誕生日も結局職場で過ごすことになった。


 最悪だ。


 深夜の帰宅、エレベーターのボタンを押す、この待ってる時間が孤独で、辛い。


 ここのエレベーター、いつ乗っても夜は怖い、幽霊が出そう。


 階数ランプを見上げる、仕事終わりの疲れと安堵感の込もったため息をつく。


 あれ、おかしい。


 このエレベーター、階数ランプの6階が光ったと思ったら、次は5階のランプが点く。


 5階のランプが点いたら、次は6階のランプが点く。


 ”永遠に5階と6階を登り続けてる。”


 どれだけ登り続けているのだろう。


 助けてくれ。


 ボタンを押しても止まらない。


 電話も通じない。


 誰も助けに来ない。


 待って、外に誰かいる。








 

 これは、Fさんが亡くなる前に投稿したツイートである。

 エレベーター内で倒れているのをマンションの住人が発見したが、意識はなく、搬送された病院で死亡が確認された。

 警察によると、死因はストレスによる心停止、過労死だと思われるとのこと。


 ツイートの内容からは他殺の線も考えられたが、エレベーター内の防犯カメラには、急に叫び始め、気を失うようにして息絶えるFさんが映っており、警察では心労により錯乱していたのではないかと結論付けられた。


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