56 留学生(修正)
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後半のコメディが少ないと感じたので、書き直しました。
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<無事に帰ってきてよかったね! お祝いしよう会>が開催された次の日―
和真が訓練学校に登校すると、教室では2つの話題で持ちきりであった。
1つ目はもちろん謎のコスプレヒーロー”バシット”の話で、和真の狙い通りバシットの戦果は真菜や他のマナルーラーのものとはなっておらず、バシットは”6人目”のマナルーラーではないかと噂になっていた。
だが、それと同時に”しかし、あのような完成度の低いコスプレで恥ずかしくないのか?””あんなダサイ格好で正体を隠すなら、俺なら身バレを選ぶね!”という酷評も飛び交っており、和真は複雑な気持ちになる。
「なあ、和真。オマエは”バシット”のコスプレイヤーを見たのか?」
「いや、俺は… 後方のキャンプで待機していたから、直接は見ていないんだ」
「そうか…。まあ、俺達訓練生の力なら、後方待機は仕方がないさ」
後方待機を言いにくそうに言った和真に、郁也は気を遣ってフォローの言葉をかけてくれた。
(ありがとう、郁也……。そんなお前に本当の事が言えなくてごめん)
だが、その優しい友人に対して、本当の事が言えずに心苦しく思う和真であった……。
そして、2つ目の話題というのが、今日から急遽<留学生>が来ることになったというもので、なんでも<聖都ジートロス>から留学してきたらしく、しかも目撃者によると<金髪美少女>らしい。
「和真…。留学生って、もしかして……」
<聖都ジートロス>と<金髪美少女>という2つの単語から、郁也は昨日会ったあの人物を連想する。
「いや、まだわからないさ…」
和真がその意見を否定したのは、もし留学生が彼女なら明らかに自分のこれからの日々の生活が義妹と彼女によって、平穏なものでは無くなると予感したからだ。
「いや、かなり確率は高いだろう。だって、オマエの後ろに机が設置されているじゃないか。物語なら完璧なフラグだぞ?」
郁也の言う通り最後尾の和真の席の後ろには、昨日まで無かった机と椅子が、新たに運ばれてきていた。おそらく、件の留学生の為に用意されたものだろう。
「いや、まだだ! この席が留学生のためのモノなのは確定だろうが、その留学生がフィナとは限らないさ…。だって、フラグというなら俺はパンを咥えたフィナさんと、今朝曲がり角でぶつかってないもん!」
和真は嫌な予感を振り払うように頭を振った後、そう反論したのだが……
担任の教師の声とともに教室に入ってきた少女を見て、和真は自分の言葉がフラグになってしまった事を後悔する……
「それでは自己紹介を」
「<聖都ジートロス>から、留学生としてやってきたフィナ・オーエスです。よろしくお願いします」
教室に入ってきたフィナは、笑顔を浮かべながらそう挨拶すると、和真に向けて笑顔を見せた。
(マジか……。フィナさんが留学生として、同じクラスに来た事を真菜に知られなければいいが……)
和真は心の中でそう呟いた。
「じゃあ、オーエスさんは三上(和真)の後ろの席に座りなさい」
「はい。わかりました」
そう返事をするとフィナは、荷物を持って和真の席の後ろに座ると彼に話しかけてきた。
「和真、これからよろしくね」
「あっ はい…。よろしくお願いします…。オーエスさん」
和真は、ぎこちない笑みをフィナに向ける。
「どうしたの、和真? 私のことは、気軽にフィナって呼んでくれて構わないわよ?」
「いや、呼びたくないっす。だって、他の訓練生からの視線が痛いので、勘弁して欲しいっす」
和真はフィナの申し出を、思わず変わった口調で拒否してしまう。だが、フィナの方は、断られた事が不服なのか、頬を膨らませている。
彼が拒否した理由は、周囲の訓練生達が“どうして、<聖都ジートロス>から来た留学生と落ちこぼれの彼が、親しいんだ?”という詮索するような目で見ているからで、目立つフィナと仲良くして悪目立ちしたくなかったからであった。
「ふふふ……。そう? 残念ね。じゃあ、人がいないところでは、フィナって呼んでね?」
その視線を察したフィナは、空気を読んでそれ以降は適度の距離を保つようになる。
彼女の配慮のお陰で、クラスメイト達からの視線は無くなり、和真は何とか無事に1日を終える事ができた。
そして、和真が家に帰ってくると
「
「ああ、そうだな……」
真菜は興奮気味にそう尋ねてくる。
「しかも、
「うん…。まあ、そうだけど……」
(なんだろ……? 嫌な予感がする……)
和真は不安げにそう尋ねる。
「
「まあ、返ってくる答えは解りきっているが、一応聞いておこう。
和真がそう尋ねてみると、真菜は彼を見つめ顔を赤くしながらこのような答えを返してくる。
「もちろん”ナニ”するに決まっているじゃないですか! 私の答えが解っているなら、無駄な質問をせずにさっさと行動に移して、おっぱじめてください!!」
義妹からは逆ギレ気味の答えが返ってくる。どうやら顔が赤かったのは、羞恥心からではなく怒りからだったようだ。
「おおっ 凄いな
義兄はツッコミを入れるが、義妹はそれを無視して話を続ける。
「さあ、
義妹は顔を赤く染め甘えるような声を出して、身体をクネクネさせながら義兄にそうせがんできた。今回の義妹の顔が赤いのは羞恥のようだ。
義兄が何もせずに、そんな義妹を冷ややかな目で見ていると、
「もう! どうして、ナニもしてこないんですか!? 目の前で鴨がネギを背負ってきたばかりか、美味しくいただけるように自ら鍋を作って、その中に飛び込んでウェルカムしているのに!!」
今度は怒りで顔を真っ赤にして抗議を始める。
「だって、その鍋は明らかに罠で、食べたら酷い目にあうパターンだろ?」
和真は、ため息をつきながらそう言った。
「そんな事ないです! ただ、私という最高料理を食べた後では、他の料理(女の子)では満足できなくなるとは思いますけどね♪」
「やっぱり、おかしな薬が入っていて、中毒になるヤバい料理じゃないか!?」
「おかしな薬なんて入っていません! もし、入っているとするならば、それは<愛情>という最高の調味料です!」
義妹はドヤ顔でそう言い切ったが、義兄は呆れ果てた表情を浮かべている。
だが、頑張って気持ちを立て直してツッコミを入れることにする。
これはツッコミというより反論であったが、どうしても言っておきたかったからだ。
「
「まあ、確かに良く言いますね。<愛>とは時には<毒>にも<薬>にもなると♪」
「良いように捉えたな!?」
しかし、その義兄の反論を義妹は、持ち前のポジティブシンキングで良いように解釈してしまう。
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