42  今夜も義妹と茶番だ!





 次の日の夜―


「さて、昨日は真菜のせいで楽しめなかったアレを楽しむか」


 和真は昨日の昼に買って来て途中まで読んだが、続きは夜にしようと隠しておいた<年上巨乳モノ>を楽しむために、隠し場所であるベッドの下に手を入れる。


 本来なら昨日の夜に楽しむつもりであったのだが、義妹の魔球でデッドボールを受けて昨夜は早々に眠ってしまったため今夜となってしまった。


 だが、隠し場所には物は無くその代わりにこのようなカードが置かれていた。


######


 貴方のお宝<年上巨乳モノ>は確かにいただきました


                        怪盗 ラパン三世


######


 義兄は黙って暫くそのカードを見つめた後に、義妹の部屋に向かうと怒りのままに扉をドンドンと叩きたかったが、ぐっと抑えて紳士的に扉をノックして室内の義妹に話し掛ける。


「真菜ちゃん、出てきなさい。お義兄にいちゃんは、君にお話があります」

「何ですか、義兄にいさん? 夜のお誘いですか? それ以外ならお帰りください」


 部屋から顔を出した義妹のその返事にイラッとくるが、義兄は怒りを抑えて例のカードを見せながら彼女を尋問する。


「真菜ちゃん、これはどういうことかな?」

「何ですかそれ? なになに… 」


 義妹はあくまで知らないという感じを出しながら、カードの文章に目を通す。


「ラパン三世ですか… きっと、可愛いウサギの泥棒が盗んでいったんですね」

 ※ラパン:仏語で「うさぎ」


「何か他に言うことが、あるんじゃないか?」

「泥棒さんに盗まれるなんて、残念でしたね。では、おやすみなさい」


 どこまでもシラを切る義妹に、遂に我慢できなくなった義兄は、怒りを顕にして語気を強めに彼女を責め立てる。


「おい、何無関係みたいな態度してんだ! オマエがラパンだろうが!! 俺の<年上巨乳モノ>を返せ!」


「ちょっと、義兄にいさん! 可愛い義妹いもうとを泥棒扱いするなんて、最低ですよ!? はっ!? わかりましたよ! 私を犯人に仕立てあげて、体で償わせようとしているんですね! エロラノベで見ましたよ!! ならば、私が可愛い泥棒ウサギです!!」


 義妹は相変わらずのエロラノベ脳で反論してくる。


「何が<私を犯人に仕立て上げて~(中略)~可愛い泥棒ウサギです!>だ! 出どころはまた郁也に借りたエロラノベか!?」


「違います~! エロゲーです!!」


「何を借りているんだ、オマエは!! そして、何を貸しているんだよ、親友!!」


 和真はまた親友が大嫌いになりそうになるが、それと同時に女の子にエロラノベやエロゲーを貸せる親友の<豪胆>さ、それと好きな作品を布教しようとする強いオタクの<信念>に少し憧れてしまう。


「オマエが、本当に犯人なんだろうが!」


「泥棒とは失敬な! それほど私を犯人だと言うなら、証拠を見せてくれるんですよね!? 証拠を出してください!」


 義兄の追求に、義妹は当然否定して時代劇のお白州の場面で出てくる悪党達のように、証拠を見せろと言ってくる。


「おうおう! やかましいや、このエロラノベ脳! この犯行カードを見てみろ! 思いっきりオマエの字じゃないか! 手書きで作りやがって! せめてパソコンで作れや!」


「字体が似ているだけです…」


 証拠を突きつけられた義妹も、流石に少しトーンダウンしがら、目を逸らして言い訳してくる。


義妹いもうとよ、いい加減罪を認めて、お義兄にいちゃんの<年上巨乳モノ>を返しなさい」


 義兄はあくまで穏便に諭すように、返品を要求するが


「そこまで疑うのなら、<年上巨乳モノ>があるのかどうか、私の部屋の中を気が済むまで探せばいいじゃないですか!」


 義妹は逆ギレをして、部屋の中を探せと言ってくる。


 その言葉に義兄は、義妹が既に<年上巨乳モノ>が処分されているため、彼女がそのような強気な発言をしていると予測する。


 ―が、次の義妹の言葉に別の意図があった事を知る。


「はっ!? 今度こそわかりましたよ! 私の部屋を探して私のエッチな下着をタンスから探しだし、それを恥ずかしがる私に見せながら『こんなエロい下着を付けているのか? この淫乱娘が!』と言葉責めして、恥辱に顔を赤らめる私の反応を愉しんだ後に― 」


「まだ続くのか!?」


 義兄のツッコミを無視して、義妹は妄想を口に出し続ける…


「今度は私の身体を隅々まで調べるつもりなんですね?! エロい身体検査をするつもりなんですね!!? 望むところです!!!」


「ある意味凄いな! 毎回、手を変え品を替え、エロイベントそこに着地させやがって!」


 義兄は思わず感心しながら突っ込んでしまう、褒められる事ではないが…


 だが、義兄が感心したのも束の間、ヒートアップした義妹は、いつものように口を滑らせる。


「さあ、義兄にいさん! あの厭らしく卑猥な<年上巨乳モノ>に出ていた策士の主人公のように、義妹いもうとの身体をその厭らしい棒で、気の済むまで調べてください!!」


「おい、義妹いもうと! どうして、内容を知っている?」

「はぅ!!?」


 義兄がそれを見逃さずに問い詰めると、義妹は”しまった!”という表情と驚きの声をあげてしまうが、すぐさま目と顔を逸して言い訳を始める。


「さっ さあ… 何の事ですか…? 私… そんな事言いましたか?」

「真菜、いいから早く返せ」


 これ以上は埒が明かないし疲れたので、和真は茶番の終了の意味を込めて、低いトーンで真菜に返却を迫る。


「もう、処分したのでありません…。ごめんなさい… 義兄にいさん…」


 真菜もそれを察して、素直に処分した事を語り謝罪する。


「じゃあ、弁償しろ。715円な」


 和真はため息を付くと、それ以上彼女を責めずに代金の返却を求める。


「身体で返すのは…?」

「金で返せ」


(オマエの身体は715円か!)と突っ込みそうになったが、和真は淡々と代金を支払わせる、もちろん現金で。


「うぅ~~~」


 真菜は財布からお金を取り出すと、自分が悪いのに和真に恨めしそうな目で見ながらお金を渡す。


 こうして、義妹の平穏な1日は今日も過ぎていく。


「はぁ~ 予定が狂ったな…。寝るにはまだ時間があるし… そうだ! 動画投稿サイトで何か見るか」


 <年上巨乳モノ>を失った和真は、睡眠までの空いた時間をネットで動画を見ることにして、サイトを開けるとオススメにあがっている動画に、彼は一瞬で心を奪われる。


「これを見よう! これは、今夜は眠れないかもしれないな~」


 それは、彼が幼い頃に見ていたヒーローアニメであった。



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