第11話 軍隊
「実弾演習ですか?」
僕は、心当たりのない言葉に首を傾げながら答えた。そんな予定聞いていないし、何なら今日ここにハーンブルク軍が来る事も知らなかった。
いや、最近は法律作りの件でとても忙しかったため僕が忘れていただけかもしれない。そんな事を思いながら一応尋ねる。
「はい、実弾演習で間違いありません。」
「なるほど・・・・・・それは兄さんの指示なんですか?」
「はい、レオルド様より兵5000を率いてユリウス様の下へ駆けつけるように命令を受けました。それとレオルド様からの書状を預かっております。」
「あ、はい。」
それを先に渡してよっ!と心の中でツッコミつつ、封を開けてみる。
すると、お手本のように綺麗な字でこう書かれていた。
『好きに使え。』
何の事なのかはすぐにわかった。つまり、僕がジア連邦共和国で行動を起こす時の武器となる人たちを送ってくれたのだろう。
たったの5000人かもしれないが、装備は全て世界最高水準、正直言ってこれほど頼もしい存在はいない。
おまけに、本拠地であるシュヴェリーンは、ここから100km以内にあるから、弾薬の補給などもできない事はない。
「ここに書かれている内容は知っていた?」
「はい、ユリウス様に我が部隊の指揮権が与えられました。特殊な装備や新兵器などは持ち合わせておりませんが、2ヶ月間ほどなら全力で戦い続けられるぐらいの武器と弾薬を持って来ております。必要があれば、一国すらも滅ぼしてご覧に入れましょう。」
サイカは、胸を張りながらそう言った。
同時に僕は、兄さんが事前に軍隊を送る事を教えてくれなかった理由もわかった。
これは、僕への試練だ。
使い方を誤れば簡単にこの国を崩壊する事ができる最強の軍隊を僕に預かるという事は、その分だけ責任が付きまとうのだ。
改めて、自分という存在の大きさに気付かされる。兄さんの弟という地位は、想像よりもずっと高いのだ。
同時に、これは脅しでもある。
ハーンブルク軍を首都リアドリアに駐留させるという事は、変な事を企めばいつでも首都を落とせるぞ、という意味もある。
きっと今頃、連邦共和国内の貴族達は慌てているだろう。まさに、喉元に槍を突き付けられた状態となったからだ。
僕に逆らえないという事は、その分だけ僕の言動が重くなる事を意味する。
「本当に恐ろしいお兄さんね・・・・・・」
「うん・・・・・・でも確かに兄さんならこういう事やりそうだね・・・・・・」
カレンの呟きに、僕は自然と応じる。実の弟である僕からしてみても、本当に恐ろしい事をする人だ。
「あの、ユリウス様、一つ質問をよろしいでしょうか。」
「うん?何かな。」
「そちらの方はどなたですか?」
サイカさんの指摘で、そういえばカレンの自己紹介をしていなかった事を思い出した。
「あぁ〜そういえばまだお互い自己紹介をしていなかったよね。こっちはカノン、ハーンブルク領出身で、今は仕事の手伝いをしてもらっている。」
「初めまして、カノン・アンレーンです。」
一応念のため、偽名を使っておく。優秀なこの人なら、今聞いた偽名を兄さんに報告して、カレンさんが無事に救出されて僕の下で働いてくれているという情報が伝わるだろう。
もちろん、カレンとカルイさんは気づかないだろうが・・・・・・
「それでこっちは、ハーンブルク軍の軍人サイカ・キサ。階級は大佐で、主にハーンブルク陸軍の指揮官だね。」
「こちらこそ初めまして、サイカ・キサ大佐であります。以後、お見知りおきを。」
彼女はそういうと、軽くお辞儀をした。相変わらず硬い人だ。
それを済ませると、今度は僕の方を向いて言った。
「では、いかがいたしますか?ユリウス様」
彼女は真面目な声で、僕にそう尋ねた。今のサイカさんの部隊の指揮権は、僕にある。
つまり、僕の命令が絶対なのだ。
今何を命令すべきなのかを考える。共和国内の全ての反政府勢力を壊滅してきて、という命令ができればかなり楽なのだが、まだ具体的な線引きや何が違法で何が合法なのか決まっていない状態なので、何もできない。
また、民主化されている10個の州はともかく、貴族が統治することになっている他の20個の州に関しては、下手に干渉するととても厄介なことになる。
ては、今の自分に一体何ができるか。
僕は、思いついた事をそのまま口にした。
「では、今民主化されている10個の州内に活動している野盗のアジトの特定と、困っている人や苦しんでいる人の保護をお願いします。それと、地形図の調査もお願いします。」
「了解しました。」
それだけ告げると、彼女はその場を去っていった。
______________________________
どうでもいい話
悲報遂にストックが切れる。
今日からは、書き切れたら投稿になります。今のところの目標は週休2日
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます