19

私はまだ家に帰りたくなかったので、そのままスタジオに向かうことにした。

スタジオに着くと何度か見たことのある店員さんが受付にいた。

予約状況を確認してもらい、空いてる部屋を使わせてもらえることになった。

私はピアノを弾きながら、葵先輩のことを考えていた。

葵先輩って本当に掴みどころなくて……私振り回されてばっかりだったなぁ。

どうして海外に行っちゃったのだろう。

紺碧の曲だって絶対これから人気になっていくって時にどうしてなのだろうか。

葵先輩にとって音楽ってその程度のものだったのだろうか……。

……いや……それはないな。

葵先輩がおかしかったのは、泣いた日とこの前ここに私を連れてきた時だよね……。

2週間近く学校も休んだし、あの時に何かあって、海外に行くことになった……?

今日の受付の人なら何か知ってるかな。

私はスタジオから出ると受付の人に声を掛けてみる。

「あの〜」

「お疲れ様です。どうかされましたか?」

店員さんは時計をチラッと確認し、終了の時刻ではないことを確認し何か問題があったのか確認してきた。

「あっ……えーっと……」

店員さんは困った顔をしている。私は思い切って話した。

「あのっ!!……葵先輩のこと何か知りませんか」

店員さんは私の勢いに少し気圧されたようだが、何かを察したのか真面目な表情になった。

「すいません。俺今野のことは何も知らないっす」

私はその言葉を聞いて少し落胆した。

「そうですか……急にすいません」

私はその後もピアノを弾く気にはなれずスタジオを後にすることにした。

出口の扉が閉まる寸前、先程の店員さんが叫んだ。

「あいつのこと、誤解しないでください」

私は思わず振り返ってどういう意味か確認しようとしたが、電話がかかってきて話始めてしまった。

しばらく待ってみたが、クレームの電話なのか店員さんはしきりに謝っていたので、流石に悪いかと思い私はスタジオを後にした。

家に着いた私は、ピアノを弾く気分でもなかったため、音楽コンテストの新たに上がっていた曲を聴くことにした。

そんなこんなで夏休み初日は終了した。


夏休み期間中は学校に行かない分、音楽に触れている時間が長かった。

夏の野外フェスのLive配信を見たり、定期的にショッピングモールにピアノを弾きに行ったりした。

コウくんが受験勉強の息抜きにと花火大会に行ったり、ちかと洋服を見に行ったりした。

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きっと…出会いは運命 白雪凛(一般用)/風凛蘭(BL用) @shirayukirin

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