2024/10/26 「僕はいつ諦めを知ったのだろうか」

 今でもたまに、ヒーローについて考える。


 変身ベルトを腰に巻き、無敵の肉体とぴかぴか光る必殺技を駆使して、世界征服を目論む悪者たちと戦うヒーローについて。  

 もう覚えていないけれど、幼いころは僕だってヒーローに憧れていたようだ。

 以前、引き出しの奥から保育園の卒業アルバムをみつけて、気まぐれにめくってみたことがある。アルバムには将来の夢が載っていて、そこに並んでいる非現実的な言葉を楽しく眺めていたけれど、僕自身の欄に当時テレビで放送されていた戦隊ヒーローの名前が書かれていたのにはずいぶん驚いた。


 ほんの幼いころだったとしても、僕がヒーローになりたがっていたなんていうのは、ちょっと信じられなかった。夢らしい夢もなかったから友人の回答の真似をしてそのまま書き写したのだといわれた方がまだ説得力があった。


 一方で当時の僕のおもちゃ箱には、間違いなくそのヒーローの変身グッズが入っていたから、どれだけ信じられなくても真面目にヒーローに憧れていた時期があったのかもしれない。


 だとすれば一体いつ、僕はヒーローになることを諦めたのだろう?


 変身ヒーローはテレビの中にしかいないのだと知ったときだろうか。世の中の正義と悪というのは見方によってくるくる変わる相対的なものだと悟ったときだろうか。もっと単純に、ヒーローごっこよりも、レゴブロックの方が性分に合っていると気づいたときだろうか。


 誰か、幼いころヒーローに憧れていた大人に、ぜひ尋ねてみたい。あなたがヒーローになることを諦めたのはいつですか、と。

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日報物語 秒夏 瞬 @byoukamajiro26

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