第35話

藤原「ずるいわよ」


「ずるくはねーだろ」


藤原「いつから出来る様になったの」


「割とすぐ」


藤原「……短縮詠唱なのに霊装に影響は出ないの?」


「おう!なんならこのままもう1戦やってもいいけど」


藤原「やるわ」


負けず嫌いなんだろうか?

目に闘志を燃やしながら答える藤原を見て何故だか少し嬉しくなった


再び距離を取り向き合う


藤原「かしこみかしこみ申す。霊装展開!」


体を包む霊力は確かに前よりは青くなっているが俺のそれと比べるとまだ薄い


「Ready…Fight!!」


機械音声が聞こえたと同時に藤原が地面を蹴り向かってくる

先程とは違い凄まじいスピード


霊装展開はただ身体を守ったり武器になったりするだけでなく、身体能力の向上させる効果もある

あくまで俺の体感だが霊装展開の霊力がより青くなればなるほど向上させる倍率が変わってると思う


1年の皆は1.5倍

今の藤原は2倍

そして俺が3倍くらい

担任はもはや分からないレベル

あくまで”向上”だから元の身体能力に依存する

それでも2倍と3倍じゃ明確に差が出てしまう


藤原の攻撃を軽く避け背後に回る


「俺の勝ち」


藤原「もう1回!」


その後も何度も何度も挑んできたが子供の相手をするかのように全ていなした


藤原「ふぅ…もういいわ、ありがと!」


あれだけ負けじと挑んできたのに引き際はかなりあっさりしていた


その後少しの間様子を見ていたが落ち込んでいるようには見えなかった

やっぱりメンタル強えぇな…


俺たちの戦いに刺激されたのか、その後は皆も模擬戦をした


皆で泊まる旅行…とは違うけどその最終日がゲームと模擬戦っていうのはなんだか普通の高校生とはかけ離れてるけど陰陽師らしくてそれはそれでいいな、と思った


今日で最後、と思うと妙に寂しさを感じもっと遊んだら良かった。とかもっとこんな事も出来たんじゃないか?とか考えてしまう


皆とこうしていられるのがあと数時間と分かったら何かをしないといけないような気分になってくる

でも今はもう19時

外も暗くなってきたしご飯も食べたし、できる事と言ったらゲームくらいだろうか…


藤原「皆!外行くわよ!」


考えていたら外へと連れ出された


ひゅ〜ん………ドーン


いきなりデカい音がするから何が起きたのかと思ったら、空には花火が打ち上がっていた


と言っても花火大会みたいなガチもんではなく市販で売ってる打ち上げ花火

それでも初めて花火を見た俺には充分感動出来るものだった


何発だろうか?

数え切れないくらいの打ち上げ花火が終わった後は用意されていた手持ち花火をする事になった


この5日間で一体どれだけの初体験をさそたんだろうか…

そのどれもがすげぇ楽しかったし最高の思い出だ

色々あったけど陰陽高校に入学出来て本当に良かったと思う


線香花火を見ながらしみじみしていたら藤原と桜井がやってきた

なんだかんだこの5日間一緒に行動する事が多かった2人

改めて見ると2人とも可愛い


藤原「2人は好きな人とかいないの?」


そんな事を考えている時にそんな事を聞かれるとドキッとしてしまう


桜井「はえっ!?僕は今こんな状態だしそれどころじゃないかな」


藤原「嘘ね」


俺には嘘をついてるようには見えなかったが食い下がる


桜井「えぇ!?なんで」


藤原「女の勘よ」


女の勘ってやつは恐ろしいもので好きな人ではなかったが桜井には気になる人がいた、それが黒川だったのには本当に驚いたけど


藤原「阿部はどうなのよ」


桜井の話で盛り上がったから終わりかと思ったら俺にも矛先が向けられた


「あー、まぁうん。いるな」


どうせバレてしまうんだろうから言ってしまえの精神

勿論俺の好きな人は、細見先輩だ


2人は流石女子と言った感じで恋バナとなるとグイグイくる

興味津々な2人に圧倒されながら俺は話した


こうして長いようで短かった5日間のお泊まり会は花火と恋バナで締め括られた

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