シングルプレイ
2人の荒垣は同時にサイコキネシスを使い、160%の力で仕切り直そうとした。
アンナは顔を顰める。
いかに血の力を解放したと言っても、再び間合いを取られてしまっては、近距離戦闘しかできないアンナでは、中距離戦闘を得意とする荒垣に一方的に叩かれてしまう。
アーカムにはその事がすぐにわかった。
ゆえに援護射撃係としてふさわしい一手を刺した。
「──《イルト・ポーラー》」
完全詠唱氷属性三式魔術。
いきなり強力な氷の砲撃が飛んできた。
ストレージ160%を使って、サイコキネシスを使ってしまっていた荒垣では、すぐにクリオキネシスへ能力を切り替えることができなかった。
そのため、非効率なサイコキネシスでのガードを強いられた。
(馬鹿な……! これまで強力な魔術を扱うためにはおかしな詠唱をしていたはずだ! 弱い風弾を連射していたあの男に、詠唱をする隙なんてなかった!)
秒間何発も《ウィンダ》を連射しているアーカムが、いきなり完全詠唱氷属性三式魔術を放てたのにはトリックがあった。
とはいえ、ごく単純なトリックだ。
『白の星よ、氷雪の力をここに
あまねく神秘を、聖獣の御手へ還せ
彼が目を覚まさぬうちに、
世界を零へ導きたまへッ!』
答え:勘が詠唱していた
(《ウィンダ》《ウィンダ》《ウィンダ》《ウィンダ》──)
『白の星よ、氷雪の力をここに
あまねく神秘を、聖獣の御手へ還せ
彼が目を覚まさぬうちに、
世界を零へ導きたまへッ!』
「──《イルト・ポーラー》」
秒間6発、風の弾丸を連射しながら、定期的に超強力な氷の砲撃をくりだす遠距離火力支援となったアーカムに、荒垣は意識を向けないわけにはいかない。
強力な《イルト・ポーラー》を防ぐためには、どうしてもクリオキネシスをいつでも使えるように、ストレージを空けておく必要がある。
荒垣の片方はほとんど付きっきりで、アーカムからの攻撃をガードしなくてはいけなくなってしまった。
そして、残る荒垣ひとりでは、血の力を解放したアンナを相手にするにはいささか不足であった。
もはやコンビネーションとかじゃない。
アーカムが荒垣をひとり相手し、アンナがもう片方を相手する。結果としてチームプレイに発展する。誰が言ったか高度なシングルプレイはチームプレイになりえる。それこそが、高い実力を誇る2人にはふさわしい。
パワーこそ力。
力こそパワー。
それが最善手だ。
アンナの剣が荒垣の胸を深く斬り裂いた。
すかさずもうひとりの荒垣がサイコキネシスで援護に入ろうとする。
だが、助けようとした荒垣の後頭部を風槍が貫く。
「あぁあああ! もういい! スルトッ! 出し惜しみはいらない! わっちごと焼き払えッ!! リセットだ!!」
荒垣は我慢ならなくなり、そう叫んだ。
直後、アーカムの直感が働いた。
『アーカム、うえから熱線が降りてくるぞッ!』
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