第71話 バレー決戦

模試と定期テストが近づいてきたのだが、今回はそんなに勉強しなかった、というよりする必要がなかった。日々の勉強でそれとなく好成績を維持していたことから、テスト前の焦りなど全く感じないようになっていたのだ。でも楽しさゆえに放課後は一応みんなで勉強会をした。ほとんど食べて落書きして過ごしていた自覚はあったが。結果的にはどちらもいつも通りの好成績に終わったので大満足だった。


2つのテストが終わると、もう学年末へと残り少ない時間を淡々と過ごす日々が続く。

体育は私たちが陸上部の子と共に女子のトップランキングを維持し続けた持久走から、お楽しみ自由競技へと移り変わった。外は寒いので、体育館でバスケやバレー、フットサルを楽しんだ。いつもいつも5人で同じチームにはせず、敢えて別チームで対戦したりもした。

特に行事もないのでこれが今の一番の楽しみだった。


この自由競技が、体育の先生の提案で急遽プチ球技大会へと変身した。私たちの学校には球技大会がないので、体育の先生の急な思いつきで実現した。

挙手制の投票の結果種目はバレーボールに決まり、1週間のうち3回ある授業で男女別に予選とトーナメントが行われることになった。

楽しみながらも本気で優勝を狙いたい私たちはいつものように集合し、持久走でしのぎを削っていた陸上部の子を含めて6人でチームになった。

私たちが本気になった理由、それは優勝チームには先生のポケットマネーでひとりひとりに学食ギフトが貰えるからだ。こうなれば絶対に負けられない。

決戦は来週なので、私たちは週末に少し遠くの広い公園に行って練習した。陸上部の子も部活終わりの疲れた身体で付き合ってくれた。

3対3でやったが、なかなかレベルが高かった。バレー経験のある友人がセッターを、私と背の高い友人がメインでアタックするという風に役割分担までしっかりと行った。

最後にはファミレスに行って6人で決起集会をした。


迎えた週明け、初日の予選は楽々1位通過を決め、いよいよトーナメントへと突入した。

予選上位なのでシードとして下からの結果を待って、いよいよ本番が来た。初戦の相手にはなんとバレー部が居たが、ひたすらその子以外のエリアに絞ってボールを落とし続けた。苦戦は強いられたものの、なんとか突破した。

その後も私たちは持ち前の力強さで楽々勝ち上がり、女子トーナメントの決勝進出を果たした。

決勝の相手にはバスケ部とバレー部、元バレー部など強烈な面子が揃っていた。私たちは恐れずに真っ向勝負をした。

どこに落としても高確率で拾われたが、お互いに力が均衡していた。しかし私たちが先に20点にきたというのに、怒涛のアタック連発であっという間に抜かれ、24点目を取られてしまった。あとが無くなったが、慌てずにボールに食らいついた。

チャンスボールに対してアタッカーの友人が放ったスパイクが、無常にもブロックされてしまった。私は後ろから滑り込みながら拾いに行ったが、数センチ届かずに木の板に吸い込まれてしまった。

惜しくも優勝できなかったが、体育の先生の厚意で敢闘賞として1食分の無料券を貰った。3000円分と比べたら随分安いが、本当に嬉しかった。


次の日にチームを組んだ6人でありがたく無料ランチを頂いた。カレーや坦々麺、御膳に牛丼など、それぞれの好みが見て取れるメニューが並んだ。今日は私たちなりの安い打ち上げだ。ひとつの大きな行事だと思えるくらい楽しい決戦だった。

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