第67話 初め

除夜の鐘と共に年が明けた。女の子として迎える新しい1年の始まりだ。お年玉をもらっておせちを食べて、コタツでゆっくりしていると友人からメールが入った。友人からのメールは実に14時間ぶり、新年の挨拶以来だ。食べすぎたからウォーキングに行かないかとの誘いがグループトークに放たれると、私を含めて4人分の返事が立て続けに送られた。それから30分後には、公園に同じ高校のジャージ姿の5人が集まった。今年もよろしくと元気よく挨拶を交し、ウォーキングがスタートした。

みんな豪勢な料理を食べすぎてしまっていたので、走るまでの元気はなかった。


年が明けて初めてみんなと会ったが、普段から週に6回会っていたし、最後に会ったのもたったの3日前なのでいつもと変わらない風景で新鮮味は全くなかった。でも、そのいつも通りの安定感こそが私にとっての宝物だ。

河川敷の遊歩道に入ると、今年の抱負の話になった。それぞれ苦手科目の克服や料理の腕を上げるといった素晴らしい抱負を口にしていった。ラストの私の抱負の前に、友人から条件が課せられた。


私の抱負は女の子としての目標にするようにと指示を受けた。勉強のことを言うつもりだったので思わず考え込んでしまった。

確かに正式に女の子になったのはつい最近の話。だから今年の抱負がそういう類のものでも良いのではないかと思えた。

早くしなさいと笑顔で急かす友人の後ろを歩きながら考え、私が女子高生としてやってみたいことを目標として宣言した。


私の今年の抱負は、スカートを短く穿くことだ。

中学の制服のジャンパースカートと違い、高校の制服のプリーツスカートは工夫次第で短く穿くことができる。大半の女子生徒は膝上辺りに来るように穿く位置で丈を調節している。

私の場合はこれまで男性の特徴があったことから、万が一捲れた時のことを考えて膝下になるように穿いていた。だがそんな心配も今後はもう要らないのだ。

私の目標を聞いたみんなは爆笑していた。もっといいのあったでしょとかなり突っ込まれたが、どんな形であれこれは立派な私の抱負だ。

女の子である以上、膝上スカートというのはやはり憧れだったのだ。


よく晴れた元旦の空の下ゆっくりゆっくり2時間ほど歩き、膨れていたはずのお腹が空いてきた。日も暮れてきていたので解散し、それぞれが自宅へと散っていった。

私も帰るや否や、酔いつぶれた姉と父をよそ目に晩ご飯の支度を手伝った。

ゆっくりしながらしっかりと動きもした良いお正月だった。


三賀日も開け、6日には学校が再開された。冬休みは本当に短い。いつも通りの通学だが、今日から私は膝上スカートにして通う。それだけで気分が違った。友人達は私のスカート丈を見て、もう実行してるし似合ってるじゃん、と褒めてくれた。いつもと変わらない日常なのに、一つ変えるだけで随分と新鮮な気持ちになることができた。

初めて女の子として迎える1年はいい立ち上がりだった。

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