第57話 眠い日
ようやく秋っぽくなってきた。
私はまだ夏服だが、紺のベストに長袖ブラウスの中間服スタイルがだいぶ増えてきた気がする。寒がりな女子のクラスメイトなんかはもう冬服だ。さすがにそれは暑いだろと思ったが、女子ってそういうものなのだろうか。
私は寒くはないが、秋口に花粉症になりやすいこともあって最近頭が痛い。
やっぱり秋の女子って不調になりやすいのだろうか。
中間テストが近づき、私たちの放課後の勉強量も増してきた。朝7時半に行っても完全下校の20時になるまで勉強するくらい本気だった。
今日も20時になり、みんなで自転車で帰っていた。みんな夏服だが、朝昼と違って若干の肌寒さを感じる。そろそろ中間服かなーと友人も言っていたし、私もそう感じた。
翌朝も7時半からいつも通りの生活を送る。だがこの日は何かが違った。どうも眠いのだ。
クリニックの先生の助言もあり、しっかりした身体を作るために、なるべく夜更かしせずに規則的な生活を送っている。だから居眠りが全く無かった訳ではないにしても、ほとんどすることはなかった。
この日はなぜか、朝の授業から放課後までずっと眠い1日だった。きっと気が張って疲れているのだろう、そう思ってこの日は自習せずに一人で帰った。疲れすぎないようにほどほどに勉強し、長めの睡眠を取って朝を迎えた。
翌朝友人から昨日は大丈夫だったかと聞かれ、なぜかとにかく眠かったけど今日は大丈夫だと思うと答えた。
友人達はどこか納得していないような顔で、それならよかったけど、と答えた。
小テストがおわり授業に入る。始まって10分もしない時だった、眠気が来たのだ。
あれだけ寝たのになんでだろ。どちらにしろ他の授業ではバッチリ目を覚まさなければ、2限目の化学の先生は居眠りに厳しいから絶対怒られちゃう。幸い隣の席に友人がいるので、寝てしまったら起こしてもらうように頼み、2限目は何度か寝落ちするも怒られずに済んだ。
見かねた友人が、昼休みに言ってくれた。昨日も今日もずっと眠かったんでしょ。それって絶対寝不足とかじゃないから、今日クリニック行ってきなよ。確かに私も寝不足とは思えない。そう考えた昼休みでさえも眠たかった。
結局今日も1日寝てしまった。担任の先生にも注意を受けた。もしかしたら友人の言うように他に理由が、そう思ってこの日も自習せず、クリニックに行くことにした。2日間のことを話すと、クリニックの先生は以外にも簡単に答えを言ってくれた。
人間が好機に向かうとき、スピチュアルメッセージと呼ばれるサインがある。それを乗り越えれば何かが起こる、という半分精神的な現象で、その代表格が眠気だというのだ。
先生は続けて、無理に起きようとしなくていいから、明日は学校を休んでゆっくりして、元気になったら出かけてみて。公欠になるように診断書出しとくからね。と優しく言ってくれた。いわばサボりみたいなものだが、学校は許してくれるだろうか。
夜7時を回っていたが、学校に電話を入れてみた。意外にも担任の先生はまだ学校に居たようで、事情を話すと案外すんなりと公欠にしてくれた。
友人にもメッセージを送って知らせた。4人分のゆっくりしてね、というメッセージが帰ってきてホッとした。
翌朝、いつものハードワークと違って早く起きる必要はないのだが、朝8時には目が覚めた。恐ろしいことに、普段ならこの時間にはもう授業を受けているのだ。
みんなを送り出してから朝食を食べ、ゆっくりテレビを見た。平日この時間のテレビなんて何年ぶりだろうか。それからココ最近やってなかったフィットネスができるゲームを引っ張り出し、2時間ほどプレイした。
昼までまだ1時間ある。クリニックの先生からは勉強も一因だから明日は勉強しないようにと言われていたが、我慢できずに英単語帳と古文単語帳で軽く勉強してしまった。
今日ここまで、私は1度も眠くなっていない。このまま治ってくれたらいいが。
お昼ご飯を食べ、体の調子も良いので出かける気になった。行く場所を特に思いつかなかったが、すぐに着替えてバッグをカゴに入れ、自転車で走り出した。ゆっくり走って20分ほどで目的地へと到着した。
自転車を駐輪場に入れ、坂になっている門をくぐって職員室へと真っ先に向かう。我慢できずに学校へ来てしまったのだ。
ちょうど昼休みの時間で、担任の先生に会いにいくとかなり驚いた顔をしていた。眠気出たらすぐ帰るようにとだけ伝えて教室に送り出してくれた。
教室に行くとクラスメイトに声をかけられた。遅いぞーと野球部の男子軍が茶化してきたし、女子も心配したよーと言ってくれたが友人がいなかった。すっかり忘れていたが今日は金曜日、学食の日だ。学食へ向かうか迷ったが、彼女たちのことだからもうすぐ戻ってくるだろう。3分ほどで4人組を廊下の向こうに確認して、すぐに走って駆け寄った。みんな驚いていたが、おかえりー良かったーと笑顔で迎え入れてくれた。
私の今生きる場所はここにしかないのだ。
この日は眠ることなく、無事に午後の授業を受けた。
私に何かの好機があるのだろうか。テストもいい点だったらいいな、そう願った。
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