第34話 夏休みの思い出

中3の夏休みはほとんどの時間を塾で過ごした。家に寝に帰るだけとはまさにこういう状態である。

塾にはお盆とその前後の広めの期間で休みがある。今年の私たちにとって本当に夏休みと言えるのはこの期間だけだ。

週1.2回運動のため以外で会っていない私たちは、お盆明けの休みの日を使って少し遠くへとお出かけすることにした。


朝7時半から電車に乗り、1時間半揺られて海沿いの都市に到着した。ここは昔ながらの街並みと現代の街並みが融合した都市である。

今日はこの街にある遊園地で思いっきり遊ぶ。

朝早くに出た甲斐あって、開場待ちのかなり前の方に並ぶことができた。

開場時間を迎えると、私たちは一目散にジェットコースターへとダッシュした。

ここには複数のジェットコースターがあるのだが、360度のループが付いたある意味シンボルのジェットコースターには常に行列ができてしまう。

日頃の運動の成果もあり1番に到着したので、その日の1番最初の運転に乗ることができた。

アトラクションが得意な私でも叫ぶほどの迫力で、全員せっかく整えてきた髪がすぐさまぐちゃぐちゃになってしまった。


それでも私たちは立て続けにジェットコースターに乗った。今度は終盤で水にダイブするレインコート必須のジェットコースターだ。

乗る前に全員レインコートを借り、びっしり決めてから乗った。さっきみたいなループはないが、垂直落下からすぐに水に突っ込むので水しぶきの量は想像の何十倍もあった。

レインコートから出ている顔はすぐさまびしょ濡れになってしまったが、こんな暑い日には最高に涼しいアトラクションだった。

コレが終わると私たちはすぐさまトイレに入り、水で落ちてしまった軽めの化粧を直した。

その後はクルーズや山の散策などのアトラクションを楽しんで昼食を食べた。

こういったテーマパークの昼食ほど高いものはないが、思い出だと思って躊躇なく食べた。ありえない色をしたパスタをみんなで笑いながら食べたが、味はあまりにも普通のミートソースだった。


午後からはパスタを吐かぬようにゆっくりと散策をし、イベントステージのショーをしばらく観ていた。

夢のない話だが私たちやそれ以下の子供、さらに大人を楽しませるために、こんな暑い日に重たい着ぐるみを着て踊っている人は本当に尊敬する。私には絶対にできない。

子供向けのゴーカートなどで緩く楽しんだあとは、締めの絶叫アトラクション3連発に向かった。

ここにある中で最長で最速のジェットコースターで叫んだ後には、垂直に落ちるスカイフォールでも叫んでしまった。

この時確信したのだが、私の声は完全に女性の高さになっていた。自分でも分かるくらいに叫ぶ声が高かったのだ。

締めでは最初のジェットコースターにもう一度乗った。相変わらず反重力の世界に連れていかれたが、やはり楽しかった。

私たちがそれぞれどこかに抱えていた勉強のストレスは、あの遊園地のどこかに飛んでいってきれいさっぱりなくなったはずである。


遊園地を後にし、近くの商業施設で軽めにスムージーとケーキを食べて帰路に就いた。

また1時間半電車に揺られ、都心の大きな駅で晩御飯に焼肉を食べた。

友人の1人があまりにも焼くのが下手で、みんなで笑いながら焼き加減を教えた。

楽しかったある平日の1日もそろそろ終わり、だが幸い明日まで塾は休みなので今日は随分気が楽だ。


結局翌日も昼からみんなで集まり、恒例の運動をした。みんな頻度が落ちている割にキビキビ動いていた。

明日からまた勝負の日々が始まる。頑張ろうと思えた夏の息抜きだった。

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