257話「体育祭当日」
いつもより少し早めにかけた目覚ましで起きた俺は、余裕をもって身支度を済ませて学校へと向かう。
今日はいよいよ体育祭当日。
体調は問題なく、天気も雲一つない最高の快晴。
あとは本番で失敗しないよう願いつつ、今日という日をめいっぱい楽しもうと心に決めながら、俺は弾む足取りでしーちゃんとの待ち合わせ場所へ向かった。
「あ、たっくんおはよー!」
待ち合わせ場所へ到着すると、先に待ち合わせ場所へ到着していたしーちゃんが、朝から弾けるような満面の笑みでこちらに大きく手を振りながら出迎えてくれた。
その姿は、いつ見てもやっぱり可愛くて、特別で、朝日に照らされたその眩しい笑顔を前に、俺は自然と笑みが零れてしまう。
「おはようしーちゃん、今日も可愛いね」
「ふぇ!? そ、そうかな?」
「うん、いつも可愛いよ」
本音がつい出てしまった俺の言葉に、しーちゃんは顔を真っ赤にしながらも嬉しそうに隣にくっついてくる。
「えへへ、行こっか!」
「そうだね」
こうして今日も、二人仲良く学校へと向かう。
初夏にもなると、朝から日差しが少し暑く感じられるのだが、それでもくっつくしーちゃんから感じられるその温もりは心地よく感じられるのであった。
◇
学校へ着くと、早速制服から体操服に着替える。
そして、朝のホームルームを手短に済ませると全員で校庭へと向かう。
学校のグラウンドには各学年が並んで座り、開会式と共に檀上に立った校長先生のスピーチが開始される。
この炎天下、ここでも相変わらずの長話だろうなと思ったのだが、降り注ぐ陽射しも考慮してか、今回のスピーチは手短に終わった事に驚いたのは俺だけじゃないだろう。
毎回こうだったらいいのになと思っていると、次に三年生による選手宣誓が始まる。
『宣誓! われわれ生徒一同は、スポーツマンシップにのっとり、正々堂々と 闘うことを誓います!』
聞きなれたそんな宣誓と共に、ついに開始される体育祭。
ふと視線を感じて斜め後ろを向くと、そこにはしーちゃんの姿があった。
俺の視線に気付いたしーちゃんは、嬉しそうにやる気に満ち溢れた表情を浮かべつつ、指をキツネの形にしてこちらへ向けてくる。
そんな、すっかりやる気に満ち溢れたしーちゃんの様子に、俺は良かったなと満足感を抱きつつ、俺も指でキツネを作って返事をしておいた。
毎回思うが、これは一体なんのサインなのかは分からないけれど。
そんなこんなで、この体育祭。
まず初めに行われるのは、クラス対抗の応援合戦である。
一年生から順に、各クラスが事前に決めたエールを叫び合うという、まぁ開始前の気合入れみたいなものだ。
一年生のフレッシュで元気溢れるエールを楽しむと、次は俺達二年生の番。
一組から順にエールを飛ばし合うと、次はいよいよ俺達四組の番が回ってくる。
「フレー! フレー! フレッフレッ! 四組ぃ!!」
クラス代表の委員長が張り上げるその掛け声に合わせて、みんなで同じフレーズを大声で繰り返して盛り上げる。
他のクラスのエールも凄かったのだが、いざ同じクラスのみんなで一緒に声を張り上げると、凄い迫力があった。
小柄な清水さんも一生懸命声を張り上げており、その様子から今回の体育祭を全力で楽しんでいるようで良かった。
こうして、クラス一丸となってエールを送り合った事で、確実にみんなの士気は高まったのであった。
そして四組の次は五組。
つまりは、いよいよしーちゃんのクラスの番である。
五組にはしーちゃんだけでなく、孝之もいるわけだが――なんとその孝之が、クラスの代表としてみんなの前に立った。
そして、孝之は手にしたメガホンを口元に当てその声を張り上げる。
「勝つのはー!?」
「「五組ー!!」」
「五組はー!?」
「「最強ー!!」」
「このクラスにいるのはー!?」
「「しおりーん!!」」
なんだその掛け声と、孝之の発するそのオリジナリティの溢れすぎたエールに笑っていると、まさかの沸き上がったしおりんコール。
そしてそのコールに応えるように、集団の中からしーちゃんが孝之の隣に飛び出してくる。
「みんなー! 今日は絶対に勝つよぉー!」
「「おおー!!!!」」
そして、しーちゃんの張り上げるその一言に応じるように、恐らく今日の応援合戦の中でも一番の声が沸き上がる。
元国民的アイドルからのエールなのだ、それに応える五組の熱気は凄まじかった。
そんな五組に対して、他のクラスからは羨望の眼差しが向けられ、五組のみんなはそれに対して優越感を感じるようにはしゃいでいた。
そしてしーちゃんはというと、ちゃんと盛り上がった事に満足するように微笑んでおり、そんな楽しそうな姿に俺も自然と笑みが零れてしまう。
こうして応援合戦は、孝之としーちゃん二人の活躍で五組の勝利となり、ついに俺達の体育祭がスタートするのであった。
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