245話「SSS」
「みなさーん! わたし達が、SSSですっ! 今日は盛り上がっていくぞぉ!」
曲のイントロに合わせてステージへと駆け出てきたのは、今日楽屋訪問をしたSSSの三人。
元気いっぱいな彼女達はまさしくアイドルで、その太陽のように眩しく弾ける満面の笑顔に、会場に集まったファン達のボルテージは一気に上がる。
それは元々SSSファンの人達はもちろん、今回のフェスでたまたま居合わせたであろう人達まで、誘われるように次々とステージ前の密度が上がってくる。
たった一目でも、そんな風に人を惹き付けてしまう魅力。
それこそが、アイドルとして必要な才能なのかもしれない。
そしてその魅力はきっと、彼女達のこれまでの努力の賜物であり、それだけ真剣にアイドル活動に取り組んでいるからこそ、楽屋ではあれだけピリついてしまっていたのだろう。
ステージ上の彼女達は、アップテンポの歌と迫力のあるダンスで早速最高のステージを披露する。
これまでのアイドル達も素晴らしかったのだが、彼女達のその完成度の高さが素人目でも分かる程素晴らしかった。
今人気急上昇中の理由が、そのパフォーマンスに全て籠められているのであった。
「みんな凄いね……」
「そうだね、みんなちゃんと輝いてるねっ」
ステージ上のパフォーマンスに圧倒されて、思わず出てしまった俺の呟きにしーちゃんが微笑みながら頷いてくれる。
それは同じアイドルだったからこそ、分かることもあるのだろう。
隣で満足そうにステージを見上げるしーちゃんの横顔は、そんなことを物語っているようだった。
そして、SSSが一曲目を歌い終える。
「今日はこのような素敵なステージに、わたし達もお呼び頂きありがとうございまーす!」
「「うぉおおおお!!」」
ステージを見回しながら、手を振るSSSのみんな。
それに反応するように、会場は声援で大盛り上がりとなる。
そしてステージ上の彼女達は俺達の存在に気が付くと、嬉しそうにこちらへまた手を振ってくれた。
それはステージ上でありながらも、ステージの下にいる俺達――しーちゃんがいることを喜んでいるようで、何だか立場が逆転しているようであった。
その証拠に、しーちゃんが小さく手を振り返すと、ステージ上の彼女達は手を取り合いながら喜び合っていた。
「では、時間も限られているからどんどん行くよー! 次の曲は、わたし達がアイドルとしてのデビュー曲になります! 『Going』、聴いてください!」
その紹介と共に、再びアップテンポの曲が流れ出す。
それはSSSのデビュー曲であり、まだ駆け出し中ではあるものの知名度は高いようで、再び会場のボルテージは最高潮に達する。
そしてその勢いのまま、残り二曲、全力のパフォーマンスを繰り広げたSSSのみんなへ向けて拍手が鳴り響く。
それは確実に、今日一番の盛り上がりであった。
満足そうに手を振り返す彼女達は、今回のこの大きなフェスの大成功と共に、また一つステージを駆け上がっていくに違いない。
そう思える程にこの大舞台、SSSのステージは見事大成功に終わったのであった。
◇
そして次は、いよいよリンリン達ハピマジの番となった。
SSS同様、既に固定ファンの多いハピマジ目当てのファン達が、ステージ前へと次々に集まってくる。
「いよいよですねぇ!」
「ええ、ここでしっかりみんなのことを知って帰って貰えるよう、全力で応援しますよ!」
上田くんや坂本さん達、ハピマジのコアなファンのみんなも準備万端といった感じで集まって来ていた。
「たっくん! ついに凛子ちゃん達の番だねっ!」
「そうだね、何だかこっちまでちょっと緊張してきちゃうね」
「あはは、そうだね! でも、みんなならきっと大丈夫だよ」
しーちゃんの確信の籠った笑顔に、俺も笑ってそうだねと笑って答える。
そして、いよいよハピマジのステージが始まる――。
前のイベントでも聴いたことのある曲のイントロが流れ出すと、会場から歓声が沸き起こる。
「みんなお待たせー!」
リンリンの掛け声と共に、ステージへ飛び出してくるハピマジのメンバー。
それは先程のSSSと同じぐらいの盛り上がりであり、けれども全く同じではなかった。
SSSが完成度の高いパフォーマンスを披露するアイドルだとしたら、このハピマジは一人一人が愛嬌のある吸い込まれるような魅力を持っており、飛び出してくると共に会場からは大きなコールが巻き起こったのだ。
リンリンのみならず、彼女達一人一人が持つ個性がお互いを高め合っているようで、前回のライブハウスではなく広いステージで見る彼女達は、より輝いて見えるのであった。
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