第66話 「4.過ち」
優しい探偵〜街の仲間と純愛と〜
ーーー富山県魚津編➍
大知さんは、続けて話す。
「いつかは探偵さんが見つけるんだろうとは覚悟はしてました。凛さんには口止めしたけれど。やはり。」
「何があったんですか?」
「凛さんに初めて会った時。びっくりしました。豊ちゃんが亡くなっていた。手紙で聞いていた豊ちゃんの娘がこんなに大きい娘さんになっていたなんて。しかも東京に出てきていて、偶然に出会ってしまったわけです。」
「すごい偶然ですよね。」
「彼女は、かなり人見知りする。何かと不器用です。東京で一人ぼっちで、心の拠り所が無くて、余り友達が出来なくて、不安の中に居ました。だからせめてもの何か力になれればと。親友の一人娘ですからね。豊ちゃんは亡くなり、おじいさん達も夜逃げしていて。彼女は、天涯孤独でした。」
「なるほど。」
「何とか力に成りたい、そんな気持ちと義務感。大人としての責任というか豊彦への恩返し。父親代わりかな、そんな気持ちでした。」
「しかし、あの日です。尾行していたんでしょう?凛さんに聞きました。」
「はい。」
「お酒を飲んで。疲れたから、横になりたいって彼女が。」
「それでホテルへ?」
「はい……。ホテルに入ったら、彼女が、私の初めての男性になってくれないかって。」
「………。」
「彼女には、聞いていて、余り今まで良い恋愛体験が無かった。若いし当たり前ですけどね。」
「そうねえ。20歳。」
「自分に自信が無いって言うんですね。やはり私では駄目ですか?って。」
「う〜ん。」
「
「彼女には、この事は、無かった事にしてくれないかと話しました。もちろん彼女にはあなたが如何に魅力的かを伝えましたよ。2人で約束して、誰にも言わない2人だけの秘密にしようと言いました。そしてもう関係は持たない約束もしました」
「もう凛さんには、会ってないでしょう?そしたら、話したら彩花さんも分かってくれるんではないですか?」
「いや、彩花もまた、実にデリケートな女性です」
「確かに調査を依頼するくらい心配してた訳ですからね」
「しかも親友の娘に。しかも彩花より10歳以上若い女性です。道義的に許されないようにも思いましたし、彼女には、豊ちゃん、凛さん、そして僕の繋がりを知られたくなかったんです」
「確かに気持ちは、分かりますよ」
「だから彩花に何も言わずに去りました。彩花に理解してもらう自信が無かった。説明してわかることでは無い」
「難しい…」
「これは、豊ちゃんだって、聞いたら理解できないかもしれないし、逆に生きていたら、たぶん殴られるかもしれませんね」
「確かに彩花さんに理解は、なかなか出来ないかもしれませんよ。しかし、『彩花さんが大知さんを愛しているならば、わからないけど、わかりたいし、理解したい』そう思うはずではないでしょうか。私も同じ男性として、何か助けになればなんでも話しますよ」
「はい」
「彩花さんと話しましょう。そうだなあ、この思い出の地を見てもらいましょうよ。一緒に、彩花さんと移り住みたいと話した魚津でしょう?」
「……確かに……わかりました。彩花に連絡します。」
「話せますか?」
「全力で彼女に説明しますよ。」
「はい。それはあなたにしか出来ないんですよ。」僕は、大知さんの背中をさすった。
「大知さん大丈夫ですよ。」
桃介は優しくそう言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます