第12話 大神さま
既に夕方だったので、定期的に祠掃除に来ることを約束して私有地である竹林への侵入権を公的に手に入れた。
俺は長老と千代を抱えながら、リビングでソラちゃんのおじいさんにお茶をもらった。
「チョコもとても懐いているね」
「いつもお世話になっています」
「さすが猫の便利屋さんだね」
おじいさんは俺と猫どもを見て微笑ましそうに笑った。俺が猫のパシリをしているのは町内では有名になってしまっているのだろうか『猫の便利屋』という単語を前にも言われたような気がする。
「長老はチョコっていうのか……、千代もクッキーとかあんこって呼んでやろうか?」
「ぶち殺されたいのか?」
千代は小さく囁くように言った。
おじいさんに聞こえてしまうのでは、と慌てて周囲を見渡すが、ちょうどテレビの音にかき消されるようにして聞こえなかったらしい。
「千代、お前こそ考えて発言しろよ」
「にゃぁん」
猫なで声だけはかわいらしい千代に呆れつつ、俺たちはおじいさんに祠まで案内してもらった。
祠は本当に小さく、言われなければ気づかない大きさだった。
その真ん前に真っ白い煙が浮いていた。
風があってもなびくことすらなく、物質としてそこにあるわけではないのは理解できた。
「あれが見えるかい?」
おじいさんがもやを指さした。千代は寒いのか俺の肩にのっしりと乗りかかっている。長老は健気にも地面をのっちのっちと歩いている。
老猫だからかゆっくりとした歩みだ。
「あの、白いもやみたいなやつですか?」
「私には狐のように見えるんだ。前に来た人は犬だと言っていたな」
「小さいですね」
「? 珍しいね。見えない子が来るなんて」
祠の前に子犬サイズのもや。千代は上の方を見上げているがそこにはサワサワと音を立てる竹の葉しかない。
長老も上を見上げている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます