第2話 ひとり

雨が降っていた。

 ぽつり、ぽつり、静かに降る雨は前髪を濡らした。

 その日、私はそんなの中、河川敷の堤防でひとり体育座りをしていた。

 どうして、そんなことをしたのか。そんなのは今になっても分からない。

 たぶん、その時の私も知らない。理由なんかなかったのだと思う。

 ただ、寂しくなって歩いていたらそこにたどり着いた。ただ、それだけだったと思う。

 その日は朝から雨だった。雨は絶え間なく降り続け、地面に落ちては跳ねて踊る。跳ねた雨粒は薄灰色の雲から透けて通る光に照らされ輝く。川は土色に変わり、草の葉からは露が垂れる。

 その景色を私は今でも思い出せる。その日はホントに心地の良い雨日和だった。

 何も考えるな。そう言ってくれていたのかもしれない。

 考えてしまえば、きっと私は寂しさに打ちひしがれて、きっと明日への希望を忘れてしまうから。

 だから、わたしは天を仰いだ。そして笑った。

 私の今まで歩んできた人生全てを――。


 母親が私を庇って死んだ。父親が後を追って自殺した。周りから可哀そうな目で見られた。親友が癌で死んだ。好きな子にフラれた。友達だったと思ってた人が裏で私の悪口を言っていた。ことあるごとに私のことを可哀そうな子だとののしる人がいた。お前には無理だと、ことがあるごとに怒る教師もいた。

 

 そのすべてを笑った。

 いつしか疲れて私は笑うのをやめた。

 何故だろう。自分のことがとてもみじめに感じた。何かを忘れてしまった。失ってしまった気がした。心に穴が開いたとでも言いうのだろうか。

 一度気づいた孤独はじっくり心を蝕んでいき、気づけば私は泣いていた。

 現実から目をそらすように心の中でこう唱える。

 私は独りぼっちなんかじゃない。私は独りぼっちなんかじゃない。私は独りぼっちなんかじゃない、と。

 そう思っている自分は紛れもないひとりだった。

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