第202話事情

オバジはシン国の国王の様子に周りの者達を外へと出すことにした。


部屋にはオバジ陛下と王妃、息子のファイ王子、それと側近だけにする代わりにシン国も兵士達を下げてもらう。


「陛下!」


それにはシン国の兵士達が黙っていなかった。


だがシン国の陛下は首を横に振る。


「皆…頼む、ここは引いてくれ。私はリバー国ときちんと話さなければならないことがあるのだ…」


「陛下…何かあれば大声をあげてください。我らはすぐにでも駆けつけられるように扉のすぐ前にいます」


「大丈夫だ、リバー国も兵士はいないのだからな、立場は対等だと思っている…そうですよねオバジ国王?」


「ええ、そうです。私は話がしたいだけですからね」


オバジは人が良さそうな笑顔で笑った。


シン国の兵士達は王達を残して渋々部屋を出ていくと…


「それで…その態度の変化の訳を話して貰えますか?もし我らで力になれることがあれば…お助けしますよ…」


オバジは顔の前で手を組むとジョウジ国王の顔をじっと見つめる。


その見透かされるような瞳にジョウジは非難される事を覚悟してここに来た理由を全て話した……




シン国の事情をオバジはじっと一言も漏らさないようにと耳を傾けた。


「何故最初から本当の事をいってくださらなかったのですか!?」


話終えるとまずファイ王子が心外だと怒りを顕にする。


「申し訳ない…あなたがたを騙すようなことをしてしまい…ただどこの国とも協定を結んでいない我が国は弱みを握られたらあっという間に潰されてしまうのです。今は国が攻め込まれにくい地形をしているので手を出してこないが、事情を知られれば…」


「唯一の息子が死にそうなのだ…必死にもなるだろう、ファイそんなに責めてはいけないよ」


「しかし…」


ファイは納得できないと顔を顰めた。


「いえ、ファイ王子の態度は最もだと思っております。私達はそれだけの態度を取りましたので…」


「本当に申し訳ない…罪を償えと言うなら償います。だがどうか王妃とケントだけは許して頂きたい…彼らにはまだすべきことがある。どうか私の首一つで…」


ジョウジはテーブルにおでこが付くほどに深く頭を下げた。


「別にそんな事は望みませんよ…それよりもその見つけたいと言う聖獣の事をもっと詳しく知りたいものです…」


「まさか何かご存知なのですか!?」


「いえ…ですが一度シン国を捨てた聖獣が力を貸すと思いますか?」


「それは…聖獣様とそれに愛されし子の望むままに…もし拒否されればそれまでです。彼らにはそうされてもおかしくない仕打ちをしたので…」


「うーん…」


オバジはどうしたものかとファイを見つめた。


ファイは無言で首を振る…その顔は教えたくないと言っていた。


「わかりました…こちらでも少し調べてみます

。しかし今までの経緯から皆様の身柄はこちらで拘束させていただく」


「構いません。ただもし聖獣様が見つからなかった場合処罰は私だけにして二人は解放していただけますか?」


「もし断れば?」


「こんな事を頼める立場ではないのは重々承知ですが…その時は…」


ジョウジは言葉を濁した。


オバジは覚悟を決めた様子の三人にこれ以上は追い詰めるべきではないと判断した。

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