第154話王宮

イーサンは王子と別れるとクロードに店を任せて屋敷へと戻ってきた。


ミラの部屋へと直行すると…


トントン…


扉をノックすると可愛い声が返ってきた。


「はーい!」


「ミラ…私だ、入るよ」


声をかけて扉を開くと


「イーサン様おかえりなさい!」


ミラが駆け足で近づいてきた。


「今日は早いですね!」


笑顔で下から見上げてくる…その顔はいつものミラだった。


あんな事があったのにミラは気を病むことなく元気な姿に戻ってくれた…


それがまたあんな事を思い出しながら話をするなど…イーサンには耐えられなかった。


そんなイーサンの様子にミラは気がつくと


「どうしました?」


心配そうにこちらを見上げている…


「ミラ…」


どう話そうかと悩んでしまい言葉が出てこない…


イーサンの顔がどんどん悲しみに染まっていくと連動するようにミラの顔が心配そうに見つめる。


「私の事なら言って下さい。私は大丈夫ですよ。イーサン様がそんな顔するのって大抵私の事ですよね?」


「実は…」


イーサンはミラが王宮に呼ばれるかもしれない事を説明した。


「また嫌な事を思い出させて…すまない」


イーサン様が謝ると…


「なーんだ!そんな事…」


ミラはほっと息を吐いた。


「そ、そんな事では…ミラには一生心に残る傷になっただろ?」


「うーん…確かに嫌な事だったけど、イーサン様もだし、みんながいてくれたから大丈夫!何も怖くないよ!今度来たら噛み付いてやるんだ!」


ガブッと噛むふりをするとようやくイーサン様が笑ってくれた。


「それだけどね…あの男はもうミラに何かする事はないよ…」


イーサン様がそっとミラを抱き上げると椅子に座らせた。


どういう事?と首を傾げると…


「あいつはね…ジェイコブは死んだんだ」


「えっ…」


ミラの顔が驚きで固まった。


「自業自得だからミラが気にする事はひとつも無い。それだけはわかって欲しい」


コクッ…とミラが頷くがその顔は沈んでいる。


「私…あの時気を失ったからその後の事分からないよ。それでもいいの?」


「ああ、あの時王子に話した事をそのまま伝えればいいよ…ただミラが小さいのがねぇ…」


「え?」


「ミラぐらいの歳の子があそこまで話せるのは…目立ってしまうよ」


イーサン様の言葉にキョトンとすると、イーサン様の心配事を理解してニヤリと笑った。


「それも大丈夫です!どうせならこれをチャンスにしますから」


「チャンス?」


「もうファイ王子にもバレちゃいましたからね。こうなったら正体とことんバラします!」


「しかし…危なくないかい?また狙われたりしたら…」


「そしたらイーサン様達が守ってくれますか?」


「もちろんだ!どうなったって守るよ…」


「ありがとうございます!なら私は大丈夫!あっでもひとつ聞きたいことが…」


ミラが再びニヤリと笑う…イーサンはその表情に笑って頷いた。

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