第61話試食
「ええ、ちょっと食する機会がありましてね…」
ケイジは意味ありげに笑うが答えなかった。
「それはお肉でしょうか?何が乗っているのかな…」
「大根をおろしたものだそうです。そこの醤油ベースのタレをかけて食べて下さい。後はサラダはこのディップと言うのを付けて食べるようにと…」
「フムフム…これかな?」
ケイジは野菜スティックを掴むと味噌マヨディップにつけた。
ポリポリと野菜を噛むと
「なるほど…」
次はスープを手に取る、クリーミーなコーンスープを一口飲むと…
「おや…」
驚いた顔をした。
「どうかなさいましたか?」
「いや…前に飲んだ時よりはるかに美味しくなっていてびっくりしたんだ…食材を渡したのは正解だったみたいだね」
ケイジは笑うと
「それにこのパン…君は食べたかい?」
「いえ、そのパンはまだですね。違うのなら昨日頂きましたが」
「そうか、それも食べて見たかったなぁ…ここの料理係の囚人は優秀みたいだね」
「ええ、そうですね」
ローガンが誇らしそうに笑うと
「では明日、その人を連れて来てください」
ケイジが笑ってローガンを見つめる。
「そ、それは…ハーパーが捕まっているので…何とも」
ローガンが言い淀むと
「ではすぐにハーパーは独房から出しておきます。ですから必ずこのレシピを考えた方を連れてきて下さいね。もし違う方がきたら…私達の契約もここまでとさせて頂きます」
ケイジがそういうとローガンは黙ってしまった。
「大丈夫、悪い様にはしませんから…」
ケイジはそういうと料理を全て平らげた。
「ああ、そうだ。この料理ですが一応看守の分も作っていただけたのですよね?」
「は、はい…材料を頂いたので囚人の分と看守の分とあるようです」
「ありがとうございます。看守達には私から伝えておきます。囚人達が食べる一時間前に食堂に行った人のみ食べられるようにしていただければ大丈夫なのでそのように伝えて置いて下さい」
「わかりました」
ローガンは頭を下げて看守長室を出ていった…
看守室を通りながら他の看守に睨みつけられたが…ケイジ看守長の言葉が気になりそんなものなど気にする余裕などなく無視して通り過ぎた。
食堂に戻ってきたローガンさんにビオスは駆け寄った!
「どうだった?」
余程自分たちの作った料理に自信があったのだろうニヤリと笑っていると
「大変美味しいと喜んでいました…ハーパーもすぐに釈放されるようです」
「そうか!にしちゃ浮かない顔だな」
ビオスが顔を顰めると
「それが…この料理を作ったものを必ず連れてくるようにと言われてしまいました」
「なら俺が行こうか?」
ビオスが言うと
「いえ…わざわざこの料理を考えた者を…と言ってました。もしかしたらミラの存在に気がついているのかも…しかも昨日料理を口にしたような事を言っておりました。何か覚えはありますか?」
そう言われてビオスはミラが会ったと言う囚人の話を思い出した。
「そういや昨日ミラがコーンスープを囚人に飲ましたって言うんだが…その囚人がその後一度も姿を見せていないらしい」
「まさか…」
嫌な予感にローガンはミラの元に急いだ!
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