第9話赤子
「終わりじゃないって言ったらどうする?」
俺はローガンをじっと見つめる。
「どういう事だ…」
詳しく話せと睨みつけ顔を近付ける。
周りに聞こえないように注意を払い、話し出す…メアリーが子を産んでその子がまだ生きている事…どうにかメアリーの子を育ててここから出してやりたい事、これを叶えるにはここでの立場が強いこいつの力がどうしてもいる。
俺は伺うようにローガンを見つめる、こいつの気分次第では赤子の存在が看守にバレるかもしれないのだ…
もし…反対される素振りがあれば…
俺は拳を握りしめ力を込めていると
「まずはその赤子に逢わせて下さい、それからどうするか考えます」
「わかった…」
「とりあえず後で向かいます…今日は適当な理由でもつけて仕事は休んでください」
ローガンの言葉に俺は力を抜くと素直に頷いた。
俺は担当看守に体調が悪いので牢屋で待機したいと話し、そっとポケットに金を差し込む…
看守は黙ってそれを見つめると
「わかった、だが一晩で必ず治せよ」
そう言うと他の囚人達を連れて採掘場へと向かった。
俺は他の看守に連れられ牢屋へと戻ると…
「こんにちは」
ローガンが顔を出した、看守はローガンが来たことに驚いていたが何やら言葉を二つ三つ交わすと笑顔で持ち場を離れて行った。
「何を言ったんだ…」
じとっとローガンを見ると
「一時間ほどここを自由に使わせて欲しいとお願いしただけです。それを聞いてくれれば帳簿の金額をゼロ一つ足してやるとね」
ニヤリと笑う。
「そうやってお前は看守達を使っているのか…」
「あんな馬鹿共に帳簿の裏工作などできませんからね。もし見つかったとしても罰せられるのはあいつらだ…精々見つからないように質素な生活を心がければいいんですよ」
悪人のように笑う様は絵になっていた…まぁ囚人だから悪人なのだが…
「それより赤子はどこですか?泣き声の一つも聞こえませんよ…死んでいる…なんて事はありませんよね?」
ローガンがジョンを睨むと
「だ、大丈夫だ…朝はまだ温かかった」
ローガンの言葉に急に心配になると牢屋へと急いだ!
開けっ放しの牢屋に飛び込みベッドの裏に作った簡易ベッドを除くと
「あ…」
赤子が力なくぐったりとしいる。
「お、おい!」
急いで抱きかかえると
「貸しなさい!」
ローガンが赤子を奪い取る!
「これは…臍の緒もついたままだし、こんな劣悪な環境に赤子を放置だと!産まれてからこの子に何か与えたのか!」
「与える物がないからこれをと…」
先程の飯を取り出すと
「そんなもの赤子が食べれるか!」
ローガンは赤子を布で包むと抱きかかえて急いで自分の牢屋へと向かった!
ローガンは走りながら…
「二棟のメイソンと四棟のハーパーを呼んでこい!俺の名前を出せばすぐ来るはずだ!」
俺に早口でまくし立てる!
「な、なんで…赤子は…」
「この子が死んでもいいのか!早く行け!」
ローガンの必死な様子と赤子が死ぬのかもしれないと思うとジョンは小間使いでもなんでもしてやると第二棟収容所に走った!
棟を移動する事に看守に金を渡す!
いつもなら交渉して少しでも安く通して貰うが構ってはいられない…今まで貯めた金を半分使い二棟に入ると…
「メイソンはいるか!」
声をかける。
「私だが…」
立ち上がったその人はスラッと高身長で白衣の様な服を着ていた。
「ローガンが至急来て欲しいと…お願いだ!」
「ローガンが?私に用って事は…そっちの頼みってことだな」
メイソンは立ち上がると大きな手提げカバンを手に取りジョンの後をついて行く。
「あんたに頼みってなんなんだ?」
ジョンはカバンを見ながらメイソンを見ると
「私、前は医者をしていたんだ、だから呼ばれた理由は誰か病人が出たと言うことだろ」
メイソンが笑うと…
「人を切るのは久しぶりだ…」
クックックと楽しそうに笑った。
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