今度は見てるだけじゃない(悠人・桜花視点)


「……なぁ、怒っ「怒ってない」」


 食いぎみに否定された。


 一度元の世界に戻って、桜花に連絡をとって合流して事情を説明してから、ずっとこの調子である。


「……やっぱりお「怒ってないと言っている」」


 絶対怒ってるだろこれ…。


 ちゃんとメッセージアプリで連絡とったのに…。

 まぁ、いきなり『戦うから手伝ってくれ』なんて言われたら不機嫌にもなるのかな。


 なんとか機嫌を直してくれないかなー…。



 ――――――――――


(桜花視点)


 はぁ……全く

 悠人からメッセージが送られてた、それはとても嬉しい。

 しかも内容は


『今から会えないか?』


 一瞬心臓が止まったかと思った、まさか悠人からこんなメッセージが届くなんて……思わず


『わかつ』 送信


 ああ?!焦ってつい送信を!


 急いでもう一度メッセージ画面を開く


『まちがえた』 送信


 ピロン


『ん? やっぱり無理ってことか?』


 違うそっちじゃない!


『だいじょうぶ もんだいない』


 これでよし……


『おお!ちゃんと小文字が打てるようになったのか、頑張ったな』


 悠人にほめられた……う…いかんいかん、なんだかニヤけてしまう。

 …茜とメッセージのやり取りをして、焦らずメッセージを打つ特訓をしたからな、茜にもほめて貰えたし…ふふ…


『それじゃあ一時間後に○○町の公園で』


 む、しまったそれどころじゃないんだった。


 悠人があんなメッセージを送ってくるのだ、何かあったに違いない、そう…わかっている、悠人は茜一筋なのだ、だからそんな浮わついた理由じゃない。



 ……で、でも一応……うん。



 ――――――――――


(悠人視点)


「ま……またせたな」


「あ……うん」


 待ち合わせ場所に桜花は普段と違って白い膝丈のワンピースに、薄いピンクのカーディガンという美少女スタイルで現れた。


 これから戦場に行くのに何故…?


 というか茜が好みそうな服装だな、一緒に買いに行ったのかな?……うん、可愛い。


「そ、そ…それでどうしたんだいきなり…?」


 桜花が顔を赤くして、モジモジしながら呼ばれた理由を聞いてきた。


「ああ、それは……――」







 で、これまでの事情を説明したらこんな状態に……なんというか。


 なんだかよくわからないけど俺が悪い、これは間違いない。


 そしてこんな格好で来た理由を聞けば、確実に怒られることもわかる。


 しかし現実は聞かなくても怒られた訳だけど…。


 桜花はセーターとジーンズに着替えてから「さ、行くぞ。」と促してくる。


 俺はああ…と短く返事をして魔力を練りながら右手をあげた。




 ――――――――――


(桜花視点)


 わかっていた。 ああ、わかっていたさ!


 だがあんまりじゃないか?

 この間、茜と服を買いにでかけた時に聞いて購入した、「ハル君を殺す服」を思いきって着て来たらこれか!


 あぁ…いや、考えてみたら私にとっての勝負服だから戦闘用で合っているのか…?



 ……………………(長考)



 やはり全然違うか(結論)



 しかし


 最近の茜は少しおかしい気がする…まるで私や桃花と悠人の仲を、無理矢理縮めようとしてるし。


 前の…それこそ勇者時代は結構独占欲が強かった様な………一体茜は何を考えてるのだろうか。



 悠人は悠人でまだ異世界グレセアであんなことに首を突っ込んでいるし。


 折角魔王を倒して、茜に再会して…やっと幸せな日常が戻ってきたのに。


「心配するな」…なんて無理に決まってる。

 悠人の強さなら、確かに戦いでそうそう遅れをとることもないだろう。


 だが、心はそうはいかない


 あの日


 いつもの様に戦いが始まり


 勝利した私達


 貴方が見当たらなくて


 私は探しにでた


 少し探してやっと見つけた貴方は


 返り血に染まり


 空をただ仰いでいた


 見間違いなんかじゃない


 あの時貴方は………――


 戦いに勝ったとしても


 傷ついてない訳じゃない


 苦しんでない訳じゃない


 ならせめて…


「悠人」


「どうした?」


「行くぞ、背中は任せろ」


「……ああ、任せる」




 今度は茜と一緒に貴方を支えるから。




 ――――――――――――


 桜花ちゃん覚醒


 案外勇者がパーティ内でモテてた理由は、一緒に戦った仲間じゃないとわからないんじゃないかって思ったり。



 そろそろ糖分が切れてこない…?













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