勇者が世界を救った方法


「ハルト? ……ハルトだとぉ?!」


 俺の名前を聞いた野盗の男が驚愕の表情を浮かべる。


「な、なんで元勇者がこんなところに?!」


「ここはフィーリア国内だ、別に俺が何処にいようが、お前には関係ないだろう」


 外に居た奴等も含めて、コイツ等は本当にこの国の人間なんだろうか?

 もし他国の人間なら戦争ものなんだが。


「さて、情報を聞き出そうと思っていた男はお前が殺してしまったし、代わりにお前に喋ってもらうとするか」


 そう言うと男は人質を取ろうとしたのか、後ろを振り返り、セルジュ達に向かって走り出す。 そのままユーリに手を伸ばした男の腹に、セルジュは迷わずナイフを刺した。


「――っ?! ぐっ…のガキ! あがっ…」


 俺はセルジュに腹を刺されて激昂する男を、そこら辺に落ちてた剣で背中から刺した。


 驚いた顔でこちらへ振り向く男。


「あの…距離……いつのま…に」


 男と俺の距離は10メートル程、男が後ろを向く間には余裕で距離を詰めることができる。


 桜花なら普通に射程圏内だ、桜花はああ見えて結構残酷だからな、全身の神経を切られて、動けなくされてから炎の横に放置とかされる。


 アガレスの勇者怖すぎるな。 …なんだその目は?


「いい判断だセルジュ、よくや……あ、大丈夫か?」


 セルジュはその場にへたり込んで、それをユーリが支えてた、初めて人を刺したのだろうし無理もないか。


「はぁ…はぁ…助かりました、でも何故ここに…?」


 近くの村が何者かに襲われて全滅したこと、知り合いからの依頼で、この村の安否を確認しにきたこと等を簡潔に説明した。


「じゃあ隣村もこの人達に…?」


 ユーリが血を流しながら、呻き声をあげている男をチラリと見ながら言った。


「それを今から確認するつもり…おい、まだ死ぬな」


 出血で死にかけていた男に治癒魔法をかける、急に意識を引き戻された男が驚きと恐怖に満ちた視線を俺に向けた。


「死にたかったら質問には全て答えろ」


 答えても直ぐには死なせないけど。





 ある日突然、家族や友人、恋人が襲われて殺されたらどうする? 当然復讐したいだろう、出来れば自分の手で直接。

 失ったものはもう二度と戻ることはない。

 ならばコイツ等の命をもって、残りの人生の慰みにするしかない。






 建物の消火を終えてから、ここに来る途中に居た兵士っぽい奴等と、村で暴れてた野盗っぽい奴等をまとめて村の広場に転がしておいた。


 呻き声や命乞いが五月蝿い。


 野盗っぽい方の隊長は、部下の謀反火槍で死んでしまったので、兵士っぽい方の隊長を引きずって他の奴等から少し離す。

 最初は反抗的だったこの男も、今ではすっかり怯えて顔を青くしている。


「周りをよく見てみろ」


 現在この広場には俺、屑共野盗や兵士を生き残ったセルジュ、ユーリを含めた村人が取り囲んでいる。

 この村には何かあった時のために、殆んどの建物の床下に収納スペースがあり、そこに備蓄なんかを貯めておくことができる。

 今回の襲撃でも女子供をそこに匿っていたため、半数以上の村人が生き残っていたのは不幸中の幸いか。


 向けられる憎悪と殺意の視線、そして手には各々ナイフ、包丁、木の棒、石、クワ等が握られている。


「お…お前、そ、そそれでも本当にゆゆ…勇者か?!」


「そうだけど? 魔王軍を殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して…お前達とこの世界グレセアを救った勇者だ。 で、お前達は救ってもらって何をやってるんだ? 」


「……ひっ……」


「色々質問するからちゃんと答えろ…先ずは目からな?」











「……」


 彼奴らの死体を焼きながら念話でティセニエラ達に報告をする、持たされた魔導具で兵士達との会話や野盗とのやりとり(正確には野盗ではなかった)に最後の尋問まで記録したので証拠もできた。


 後は国境の近くに陣取ってるらしいを叩くだけだが……俺が行ってもいいのか聞いたら、援軍を待つかせめて桜花を連れて行けと。


 うーん……一人でも何とかなると思うんだが…。



 ―――――――――――


 にかいもえらーできえたはなし


 悠人さん歪みすぎ問題、援軍なら元勇者パーティのメンツ、桜花なら桜花(?)



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