ができるまで・サラリーマン・東京ドーム8個分

「だいたい東京ドーム8個分ってところなのか。こんな広い街を地下につくるなんてさすが世界でも一番有名なテーマパークだな。しかし、でっかいなぁ」


 たすくが興味津々に町中を眺めていると、くすくすと笑い声が近くから聞こえてくる。氷姫ひめがひときわ大きな笑い声を出しているが、よくみれば周りの全員がにやにやしている。


 きぐるみたちに見送られながら建物を出てしばらく歩いていて、あまりの広さに外に出られる気配がなく、色々質問をしていたらこのざまだ。


「なんだよ。なにがそんなにおかしいんだ」


 氷姫の涙は嬉し涙だった。佑に再会したことを素直に喜んでいたらしい。そのままその雰囲気を味わってもいたかったが、きぐるみ集団に囲まれたままでは気まずかったし。早いところつとむさんに報告もしたかったので急いで黄昏書店に帰ろうと決めたのだ。


「えっと。ナイショです」

「そんな野暮なこと聞くなんて、彼女ができるまで随分と時間を要しそうね」

「デリカシーなさすぎ。そこは触れないでひとり納得しおくところでしょう」


 なぜだか夏希なつきかえでに厳しいことを言われる。腑に落ちないが数の差で勝てっこないからこれ以上はなにも言わないでおく。


「ここにいる人たちは全員サラリーマンみたいなもんなんだよな。管理しているやつらがひどい目に合ったっていうのに。平和なもんだな」

「まだ知らないんだろ。情報が上に行ってから対応が決まるまで多少の時間があるはず。その間に出たほうが良さそうだな。流石にただで逃しちゃくれないだろうけど」


 佑も永遠とわと同じ意見だった。出るにあたって守護しているものもいるだろう。出口がひとつなのはそういうことだ。

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