うわばき・応援団・初恋

「なんか吹っ切れた?」


 永遠とわさんが嬉しそうに氷の剣を受け取る。氷姫ひめの人生に彩りを与えてくれたみんなの役に立てるのであればそれは。それだけで喜ばしいことなのだ。きっと。


 初恋もまだな氷姫にとってその感情はなにものにも代えがたいものだ。


「さて、いっちょやりますかね」


 永遠さんがそのまま剣を構えてライオンさんの集団に向かって挑発する。それを合図にみんなが同時に動き始めた。氷姫は邪魔にならないようにみんなの後ろに移動する。


「ちぃっ。あくまでもやるっていうなら手加減はしないからな。無事に帰れるなんて思わないことだな」


 ライオンさんの合図とともにきぐるみの集団も動き始める。うわばきを履いているその姿は見た目だけでは学園祭ではしゃいでいる学生にしか見えないのだけれど、手に持っている武器がえげつないのでそのほんわかな雰囲気は消えている。


 氷姫は応援団のように後方から氷を生成してきぐるみ集団の動きを阻害することしかできない。でもそれが効果的に働いている気がする。それくらいにはみんなが戦いやすそうにしている。


 でも、数が多いのでいくら倒してもこちらがわの不利は簡単に覆せそうになさそうだった。

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