大盛り・男・肉食

「ああん。なんだよこれ。ほどきやがれ。ふざけんなよ」


 目を覚ました弾丸が後ろ手に縛られたままその状況から抜け出そうと暴れ出す。しかしそんなことで抜け出せるはずもない。


「時間が経つとずいぶん口が悪くなるんだね。それだけつらい状況に置かれ続けるんだろうけど。それにしてもいい話じゃないよね。こっちの世界でやさしい佑おにいちゃんのままがいいよ」


 声が冷たい隆司りゅうじくんを見ていることしか出来ない。


「じゃあね。また戻っておいで。最初のころのおにいちゃんとして」


 目で追えないくらい早い動きで隆司くんの手が動いた気がした。


「おいっ。俺に何を……」


 その言葉を最期に一瞬に弾丸の姿がその場所から消えてしまう。


「おいっ。勝手に強制送還するんじゃないよ。こっちの労働力を勝手に減らすんじゃない」


 慌てて隆司くんに近づくライオンさんも途中で足を止める。それは隆司くんが冷たい目でにらみつけたからだ。


「勝手にこちらに呼びだしておいてそれはないでしょう。それっぽい物語をはしから呼び出して労働力にして、ここに閉じ込める。男なら園内の雑用から整備、マスコット。女ならキャスト、案内、受付。強制送還を盾にひたすら働かせる。それが許されると思うの?」

「肉食の人間が大量にいるんだ。食費だって馬鹿にならない。それこそ大盛りにするような連中ばかりだ。それでも不当な扱いだと?この世界にいられるだけで幸せを感じるような連中が」

「それを言うのは本人たちで君たちじゃないよ」


 隆司くんは立ち上がるとライオンさんに対して構えを取った。

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