バス・子連れ・デート

「しっつこいんだよっ」


 弾丸が振り向きざまに永遠とわさんに銃弾を撃ち込もうとする。そのタイミングはどうしたって弾丸のほうが動きが早く。永遠さんの攻撃が当たる前に弾丸が放たれてしまう。


 どうにかしないといけない。でも、あの近距離では弾をそらすことも難しく、単純に氷の膜を貼ったところでそれは貫かれてしまうだろう。だからといってなにもしないんてそれこそできやしない。


 だから必死に考える。いや、考えるよりも先に体が動いた。氷の小さく。でもその質量はいつもより多く。狙うのは一点のみ。それが少しでもズレてしまったらまるで意味のない行為。


 目に見えるだけの、手の届かないことろにいまだけでいい。手が届くように願う。


氷姫ひめっ。ナイスっ!」


 氷姫がどうなったかの結果を確認する前に永遠さんから声が上がった。うまくいったらしい。氷は銃口を塞ぎ拳銃は機能しなくなっている。


「くっ。まだだよっ」


 弾丸は反対の手に持っている拳銃を永遠さんの方に向けようとするがそちらは近くにいた楓さんが見逃さない。持っていた包丁で斬りかかる。


「っ。このっ」


 弾丸は焦っている気がした。これまでのイライラしている様子とは少し違う。さっきほどまではデートの待ち合わせに待たされていた感じだったけれど、今はその待ち合わせに向かっている途中のバスに乗り遅れたときの感じだ。


 永遠さんが持った氷の剣が弾丸の肩あたりに突き刺さる。きっと狙っていたところとはズレてしまったのだろうが、それはたしかに決定的な一撃だった。


「子連れの連中に負けるんなんて、そんな馬鹿なことあるかよ」


 苦しそうに捨て台詞のように吐き出している弾丸は弱々しく見えた。そしてそれはどうしたってその姿をたすくさんと重ねてしまう。


「はっ。その子供に負けたんだよ。お前は」


 永遠さんが氷の剣を弾丸に向けてそう言い返す。それだけで、もう決着がついたことは明白だった。

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