ガリガリ・ポジティブ・記念日

 弾丸が構えた拳銃の角度から大体どのあたりを狙っているかを把握し、予めその範囲に氷の膜を作り出すことで氷姫ひめは拳銃から飛び出してくる弾をかろうじてよけていた。


 しかしそれは綱渡りを常に続けているようなもの。いくらポジティブに考えたっていつかは失敗するし、失敗とまでいかなくても近くにいる誰かに当たる可能性だってあるし、跳弾により自らに跳んでくる可能性だってある。


 それに。


 反撃の糸口は一向に見当たらないのだ。これではいくら防ぎ続けたところで勝ち筋にはつながらない。


 段々と弾丸がイライラしていくのも手にとるように分かったりもする。どうにかするところまでいかないにしてもどうにでも対処できるようにイメージを膨らませなくてはならない。


 氷の針を作って罠を張るか。そもそも巨大なつららで遠距離から攻撃してみるか。弾丸の動きが少ないことを利用して、周囲を凍らせて身動きを取れないようにするか。様々なイメージをするがどれも成功するイメージが湧かない。


「はっ。そんなガリガリの体でよくやる」


 もっと無口だと思っていた氷姫はその様子に驚く。思ったよりも口が数が多いし、内容もその場の感じたことが多い。もっと思慮深い感じだと思っていた。いや、それは全部佑たすくさんを重ねているからだ。先入観に過ぎない。


「今日を記念日にしてやるよ。最初っで最期の記念日になぁっ」


 なにかに取り憑かれているような感じすらする。それを冷静に分析している自分自身にちょっとだけ嫌気がさして。できるだけ早く終わらせたい。そう思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る