逆転・コンパニオン・エリート

「まじかよ。こりゃこわい。そんな力を隠し持っているだなんてお嬢ちゃんエリートだな」


 侍がごちゃごちゃと何かを言っているのはわかるがそれが言葉として頭に入ってこない。これも口裂け女の力の副作用だ。頭がボーッとする。その変わりに得られるのは絶対的な高揚感と全能感だ。すべてのものを斬り裂けるような気分に陥る。


「悲しいねぇ。そんな乱暴に力を振るっちゃうなんて。そんな粗暴な力じゃ俺には届かないよ」


 ぶつぶつとしゃべっている侍に向かって包丁を振り下ろす。それと同時に反対の手で薙ぎ払うように振る。


「おっと、怖いねぇ。そんな口じゃなきゃコンパニオンにでもなれば人気者になったんだろうに。もったいないね。こんなこと言ったらセクハラだし、大問題か。怖いねぇ」


 刀を自由自在に動かしてそれらを捌くと侍は足を軽く伸ばしてくる。かえではそれに引っかかて体勢が崩れてしまう。


「くっ。このぉっ」


 倒れまいと必死に堪える。その過程で包丁が刀に触れて金属がこすれ合う音があたりに響く。


「んなっ」


 それに驚いた侍に一瞬だけスキができた。逆転するなら今だ。楓は全力で包丁を侍めがけて投げた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る