ブロック・元カレ・寸止め
「元カレがさぁ。このまえ突然目の前にあらわれて、どーしよって感じだったの。そうところが面倒くさいから分かれたっていうのに。ほんといやになっちゃう」
街を歩いていたらそんなことを大声で話している女の人がいて、その人が電話を持っていたのものだから少しだけ驚いてしまった。
「あの。ここって電話通じるんですか?」
「あー?電話なんて通じないぞ。ここから黄昏書店にかけようとしたことがあったからな」
だったらあれはなんなのだろうか。あれも物語の能力のひとつだとでも言うのだろうか。まあ、ドラゴンがいるくらいだしな。それくらいなんてことないのかもしれない。
「ここ専用の電話回線があるでごわすよ。ほら」
お相撲さんがそう言ってスマホをどこからともなく取り出して渡してくる。手のひらが大きすぎてスマホが小さく見える。よく見ると普通の大きさのsれの電波を表すマークは確かに立っている。
「地上からの情報はブロックされてるでごわすが。この街の中だけのなら割と自由でごわす」
そんなものまであるなんて徹底してここは隔離されながらも自由を求めているような気がしてならない。
物語を利用しながらもここにいることで不自由をさせないようにしていると思うのだけれど。あの四天王たちはどうしてそうまでしてこの世界を壊したいのだろうか。
もともといた世界でもそうだったのか。この世界に来てからそう考えるようになってしまったのか。全員が全員そうでないのかもしれないし、それぞれに理由があるのかもしれない。
「自由なのに。もっと自由を求めるんですね」
氷姫のつぶやきに
「自由だからだろうな。寸止めをくらっているような気持ちになるんだろう。物語からしたらもっと開けた世界にいけるんだと思っていたところに結局閉鎖された空間に閉じ込められているんだ。世界はもっと広いんだと。そう実感したいんだろう」
おんなじ物語である喜美子さんが言うと説得力がある。
「さ。ついたでごわすよ。ここが計画が実行される場所でごわす」
お相撲さんが案内してくれたそこは地上へと続く階段への入口だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます