お姉ちゃん・デラックス・何も言えなくて

「ねえ。こんな感じで目的達成できるのかな?」


 かえでさんの心配ももっともだ。あまりの展開についていけない。永遠とわさんもおんなじなのこ困った顔をしている。


「砂浜くらいなら動きに支障はあるまい?思う存分かかってこい。相手をしてやる。それがここの王者の務めだ」


 ドラゴンらしく堂々としたその姿はやっぱりおじさんにしかみえない。


「まとめてかかっていてもいいのかい?なにせこっちは非力の集まりなんでね」


 少しでも勝算を上げるためには仕方のないことだとは思うけど、いきなり言われると心の準備が追いつかない。


「ああ。いいとも。あんたらは語り部なんだろ?多少強いだろうが、我にとってみればそもそも存在としての底が違う」

「言ってろ。こっちだってそんな生半可な覚悟でここにいないんだ」


 永遠さんの言葉に楓さんも夏希なつきさんも喜美子きみこさんも深くうなずく。たすくさんと隆司りゅうじくんを助けたい思いはみんな一緒だ。


 まるでお姉ちゃんができたみたいで、ちょっとだけ心が揺さぶられる。その中には永遠さんも入る。


「なるほどな。ではこちらも本気でいく。このままでは戦いにくいので本来の姿に戻らさせてもらうぞ」


 おじさんの姿が光に包まれたかと思ったら、その光が膨張していく。驚くべきことにそれはファンタジーの世界に出てくるドラゴンの姿そのものに変化していった。


「レッドドラゴン……」

「ほんとにいるんだ……」

「おお。ホンモノだ」

「デラックスじゃん!」


 それぞれ思い思いの感想を口にする中に氷姫ひめは驚きのあまり、何も言えなくて固まってしまった。そしてその間にもドラゴンは動いていた。赤い鱗をまとったドラゴンの口が大きく開く。そしてその開かれた口の奥に炎のゆらめきが見えた。


「逃げろっ!」


 永遠さんの言葉にとっさに動こうとするもどこに逃げていいのかさっぱりわからなかった。

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