男子・美少年・兄弟

「俺は親兄弟がいなくてな。ここにいる連中がその代わりだったんだ。それもこの世界に来なきゃ一生できなかったであろう家族だ。それがこんな目に合ってるんだ。少し位、不敬なやり方でも神様は許してくれるよなぁ」


 言葉からにじみ出る殺気で身動きができない。こんなことは初めてだ。実力の差が為せる技なのか、それともたまりにたまった憎しみがそうさせているのか。


 わかっているのは氷姫ひめたちの命が危ないということだけだ。


「はぁ。やめてもらってもいいかな。やったのは俺だし。そいつらは関係ないんだ」


 聞き覚えのある声が聞こえて、侍の殺気がそちらへ移る。


「ああ?お前もこいつらの仲間か?美少年に見えるけど、ほんとに男子か?随分と体の線が細いが。そんなやつにこいつらがやられたっていうのかよ。はっ。もしかしてお前が組長が言ってた邪魔者か?」


 侍はもうこっちのことを気にしていないのか永遠さんだけを見ている。そのまま後ろから攻撃することもできたのかもしれないけれど、一撃で止めをさす自信がなかったのだろう。一旦姿を表してそのすきを狙っているようだ。


「ああ。そうだよ。お前らの存在が邪魔だと思っている人たちがいてね。個人的に用事はないんだが、この組織解体さえてもらうよ」


 馬鹿正直に会話しているのだけれどその間もふたりの間では攻防が繰り広げられているように見える。


 その証拠に氷姫のそばにいる3人は震えっぱなしだ。その圧倒的な殺気の余波に当てられているのだろう。

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