ハンサム・裏社会・夏休み

「まあ、いいや。そんなことより氷姫ひめ。ちゃんと武器は持って帰ってきたんだろうな?」


 永遠とわさんがやっとまともな質問を口にする。それが当初の目的だったのだから当然なのだが、妙な光景にそれを忘れてしまっていた。


 思わず無言でうなずくことで返事をしてしまう。


「見せてみろって言いたいけれど、その感じじゃどうやら予定通りのものらしいな。直接的な戦闘が苦手な俺にとってはそのほうがたすかるぜ」


 黙っていればハンサムだと思うのだけれど、口を開くと残念な代表な永遠さんが珍しくしおらしい。


「しっかしこんな裏社会みたいな世界があるなんて、語り部の世界って奥が深いね。しかもそれを経営しているのがあのムーンなんてねぇ。それもまた夢の国の一部だっていうんだから信じられないけどありうるって思っちゃうよ」


 語り部になりたてのかえでさんはずっとテンション高めだった。おかげでここに来るまでの間、いくつか騒動があったくらいだ。


 幸い夏休み期間だったため、出払っている人間も多かったのが幸いしてここまで来ることができた。


「さっ。ここの連中が暴れ始める前に、出発するぞ」


 街の様子もどこか緊張感が漂っていた。一部の連中のものが全体に伝わってしまっているのだろう。それはもうあの人達が動き始める寸前だと、そう永遠さんは思っているのだ。


 

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