音楽・おばけ・スープレックス

「さて、スープレックスされたいやつから前に出てくるといいさ」


 永遠とわさんはそんな状況でも強気なままだ。頼もしくもあるけれどあぶなかしくも思う。


「ああん?お嬢ちゃんのくせに威勢はいいんだな。組長、俺から行っていいっすか」


 ひとりが前に出てくる。


「お前がやったって言うならその力見せてもらおうじゃないか」


 永遠さんがなんの目的でお相撲さんと対峙したのかは興味がないのか、単なる戦闘狂なのか。ただその後ろで組長が表情を変えずになにかを考えているのが気にかかる。


 お相撲さんに比べたら小さいその人の身体は細いが筋肉質。シャドウボクシングをしているのをみていると格闘技を使うのは間違いなさそうだ。ゆっくり近づいていったふたりは間合いに入ったようん見えたが動こうとしない。


「そっちからでいいぜ」


 永遠さんが余裕の笑みを浮かべる。それを見て当然のように相手は頭にきたのか殴りかかっていった。


「その可愛いかをが歪んでから後悔しても遅いんだからなっ!}


 手始めの攻撃が氷姫ひめの目には映らないほどのスピードで繰り出される。それを永遠さんはその場を動くことなくかわしている。いや、氷姫の目にはわざと攻撃をはずしているようにしかみえない。まるでおばけに殴りかかっているがすり抜けてしまっているようだ。


  しかし、相手が焦っているところを見ると永遠さんが避けているだ。拳が空を裂く音が音楽のように聞こえてくる。


 後ろの人達も気味が悪いくらいにその光景を無言で見つめているのを見ると氷姫はそこから逃げ出したくなる。それでも、たすくさんのことを思えば、その場を離れることなんてできなかった。

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