野生の・大逆転・大集合

「いくでごわす」


 お相撲さんが勢いよくぶちかまそうと、地面を強く蹴った。氷姫ひめはその圧に自然と足が一歩下がったのを自覚して、永遠とわさんの心配をする。離れていてもこの圧なのだ。直接対峙している永遠さんの受けているものは計り知れない。


「永遠さん!」


 しかし当の永遠さんは野生の勘が働いているのか、ぶちかましのタイミングどんぴしゃでお相撲さんの上を起用に飛び越える。お相撲さんは勢いを殺しきれずに噴水に直撃してしまう。


「おっと。そんな大きい音出してここに仲間を大集合させようっていうのか?でも、そんなことしたら自らの恥を晒すようなものだけど大丈夫かい?」


 さらに挑発を続ける永遠さんにはなにか狙いがあるように見える。もしかしたら騒ぎを起こしたいのかもしれない。48人もの仲間がいるのであれば少しでも引き寄せて一網打尽にしたいところだ。


「そんな余裕でいいでごわすか。仲間が集まってきたらこちらにとっても好機。大逆転でごわすよ」


 それはそうだとも思う。都合よく一網打尽にできる保証はなく氷姫の力なんてたかがしれている。でも永遠さんに勝算があるのだろう。いつものことだ。たとえどんなにひやひやする場面であっても永遠さんはなんとかしてきた。


 あれ。でも。


 途端に不安になる。ならなんでたすくさんはいなくなってしまったのだ……そう、疑問に思ってしまった。

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