運命・涙の・フレンド

「ちゃんと来てくれてうれしいよ。旦那の話じゃ、随分と勝手なこと言ってるみたいだったからな」

「勝手なこと言ってるのはそこの人の方じゃない。私は至極まっとうな意見を言ってるいるだけよ」

「シロクマの家にパンダ柄の子どもが生まれたからって浮気を騒ぐことがかい?」


 永遠とわさんの挑発的な態度にパンダさんの奥さん(仮)はおそらく肩をすくめたのだろう。もこもこの肩がちょっとだけ動いた気がした。


「騒いでなんてないわよ。私は聞いただけ。あそこの子どもパンダみたいだって噂になってるわね。って。そしたらその人ったら急にうろたえ始めて浮気を疑ってるだの、俺はやってないだの。そんなのやってるって言ってるようなものじゃない」


 呆れた口調ではあったのだけれど、優しそうにパンダさんを見つめるその瞳からは涙の種が見えた気がした。それはきっと奥さんも信じたくても信じられない状況に追い込まれたのだろう。


「それなら。ちゃんと話せばいいと思ったんだけどな。どうやらそうでもないらしい。そんなこそこそ後ろからついてきてなんのようだい?」


 永遠さんはあっけらかんと、入ってきてもいない人に話しかけた。食堂の引き戸がゆっくりと開いていき入ってきたのはシロクマさんだった。


「そこの奥さんにあることないこと吹き込まれちゃ困ると思ったんだ。でも気が付かれるとは思わなかったよ」

「あんたはシロクマさんの旦那さんじゃないか。一いったいぜんたいどういうことだい」

「まあ、順番に行こうじゃないか。せっかくフレンドが来てくれたんだし、顔も素直に出してくれた。だったら焦る必要なんてない」


 フレンド?パンダさんの友達のシロクマさんということだろうか。


「なあ。そう思うだろう?」


 でも永遠さんはシロクマさんが入ってきた引き戸のさらに向こう側に声を飛ばしているように発声した。そして、シロクマさんの後ろからスッと入ってきた人物を見て氷姫ひめは驚いた。


「これも運命でごわすな。いや、それとも永遠さんの実力を見誤っていただけかもしれないでごわす」


 入ってきた見覚えのあるお相撲さんに氷姫の頭の中は混乱するだけだった。

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