エチケット・激シブ・怪盗

 まるで怪盗の気分を味わっているような時間が流れた。犬と猫が螺旋階段を降りきり、外に出たときそこに拡がっていたのは先程までいた場所と同じような町並みだった。


 同じような街が階層のように連なっているのだとすると、一体この場所を創造している物語はどれだけの力を秘めているのだろうと思う。


 そんなことを永遠とわさんに話す暇もなかったのはコソコソと隠れながら進まなくてはならなかったからだ。街には犬や猫と同じようにきぐるみを着たたくさんの人が歩きまわっていて、流石に永遠さんの能力だけでは制御しきれなくなってしまった。


 肝心の犬と猫には適応し続けているのであとをつけていることを気取られることはないにしても、緊張の連続だ。


 うさぎや鹿、牛や馬など様々な種類のきぐるみの中でひときわ目立っていたのはマングースのきぐるみだ。永遠さんも思わずうぉっ。激シブっ!と小さく呟いてしまっていた。口にしてしまってからしまった顔をしていたが、幸いなことにバレるようなことはなかった。


 当然のように永遠さんもエチケットを気をつけていたのだろうけれど、どうしても漏れ出す無作法さにヒヤヒヤしながらも大きな建物に犬と猫が入っていくのが確認できた。ここにライオンとやらがいるのだろうか。そうしてライオンであればふたりの行方を知っているのだろうか。

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