うんとこどっこいしょ・監督・おねしょ

「うんとこどっこいしょ」


 巧樹こうきくんをお相撲さんにあずけて、向かった先の噴水では小人たちが彼らからすると大きな荷物を運んでいるのを見つけた。


「あれ。なにしてるんだ。まったくわからん」


 降臨すると言うからもっと厳かな空間を想像していたのだけれどそこにあったのはなごやかな風景にしか見えない。小人が一生懸命運ぶさまは微笑ましくもある。しかし、それがどう降臨に繋がっているのかはまったくわからない状況だ。


「うんとこどっこいしょ」


 運んでいる荷物の中身はなんだろうかと疑問に思っている間に作業はどんどんと先へと進んでいく。


 監督らしき小人が指示する場所へとその荷物を次々と運ばれているのをただ疑問に思いながら眺めているうちに作業は終焉を迎えているらしい。


「うんとこどっこいしょっ!」


 ひときわ大きい掛け声とともにその荷物が解かれて中身が放り出される。


「なんだそりゃ」


 永遠とわさんの感嘆な言葉とともに赤い絨毯が噴水からまっすぐに数十メートル敷き詰められた。


「降臨っていうかなんかのパレードでも始まるみたいだな空気だけど。まさかな」


 永遠さんが余計な一言を言ったからなのか、派手な音楽が流れ始めると噴水がゴゴゴと音を立てながら上にせり上がっていく。


「う、嘘だろっ。そんなおとぎ話の国みたいなことが起きるのかよ」


 おとぎ話の国なんて、まさにここのことのようなものなのだからなんの不思議もない気がするのだけれど。と疑問に思ったものの氷姫ひめは口にはしなかった。


「お、おい。あの小人とか水がかかっておねしょしたいみたいになってるんだが、いいのかよ。あーあ。派手に演出なんてするからそうなる」


 永遠さんの妙な優しさにくすりと笑いそうになるのを堪えなければならなかった。

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