あいうえお・アーティスト・のために生きている

「それでなんでまたこうやって遊園地の中を巡らないといけないんだよ氷姫ひめ


 永遠とわさんは人混みが苦手なのか、逐一文句を言いながらジグザグにあるき続けている。なんでジグザグなのかというと人を避けながらなのだが。それがまたおかしな話で永遠さんは認識されるのが嫌みたいで能力を使いながら歩いているのだが、それが逆に人を避けざるを得ない状況を作り上げているのだ。


 なぜそんなめんどくさいことをしているのか氷姫には理解し難いが本人のこだわりらしいので放っておくことにしている。それにしてもだ。さきほどまで魔女の説明を聞いていたのになんのために生きているのかすら疑問に思う。


 氷姫からしたら、生きることはたすくさんのために捧げるものだ。自分の命なんてとっくに捧げてしまった氷姫には助けてもらった佑に恩を返さないといけないと感じている。


「この遊園地が物語の管理下にあるって話ですよ。この前も私達の動きを監視されていてその後を付けられた結果、佑さんの消息が断った可能性があるって」

「じゃあ、いいのかよこの会話だって筒抜けってことだろ?不用心じゃないのか?こんな堂々と園内で話をしていたら」

「まあ、それはなぜかわからないけど魔女さんがこれを持って入れば大丈夫って言ってました」


 そうもらったペンダントを永遠さんに見せる。小石程度の赤い宝石がはめられたシンプルなもので、まったくもって効力を感じはしない。でもとりあえず信じるしかない。乗りかかった船というやつだ。


「そのあたりのアーティストも物語の力で人気者っってことなのか。まあ、納得っちゃ納得だな」


 魔女の言葉を信じるなら子どもたちにキャーキャー言われているキャラクターやアーティストたちも物語の力を知ってか知らずか使っているのだろう。


 あいうえおと言っただけでも不思議な力で相手を魅了しかねないその力はおんなじ力を使う身としては少しだけ不気味に感じた。

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