ドレッシング・クッキング・レオタード

 無事に帰れたら隆司りゅうじくんにクッキングをしてあげるんだ。その思いでひたすらに戦い続けた。


 しかし、思っている以上に魔女との戦いで消耗していたようで思うように力を振るうことができなくて焦りばかりが募る。


 対して相手は変幻自在に力を変えては攻撃してくる。そのスタイルはたすくに近しいものがあり、勉強になることも多い。


 近接攻撃をフェイントに使い。背後からの誘導攻撃。防御重視のスタイルに切り替えたかと思ったら素早く動き始めて、撹乱してくる。能力の根源はわからないけれど、そのスタイルは様々。合わせて着ているものも変わっていく。


 白銀の鎧に、武闘家の道着に踊り子のレオタードに。やっぱりどこか佑が昔コピーした転職能力に似ている気がする。でも、決定的になにかが違うそんな気もする。


 そして、どうしようもなく。佑は敵わないことを薄々感じ始めていた。地力が違う。例え魔女との戦闘で披露していなかったとしても敵わなかった自信があるくらいにはだ。


 隆司くんを追いかけず佑の相手をしていることにも意味があるように思えてならない。さっさと片付けて追いかけることもできそうなのにしない。そんな様相だ。


 ああ。ドレッシングをサラダにかけるのを隆司くんは嫌うんだよな。走馬灯のように記憶が流れることは佑の存在からしたらそれ自体が奇跡みたいなものだ。


 そのことに気がついたときには佑の身体を彼の手にした槍が貫いていた。


 ああ。やっぱり敵わなかった。佑が最後に考えたことはそれけだった。

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